予防的乳房切除(読み)よぼうてきにゅうぼうせつじょ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

予防的乳房切除
よぼうてきにゅうぼうせつじょ

遺伝性乳癌(にゅうがん)の発症を予防する目的で行う乳房の切除。2013年に、家族に複数の乳癌患者をもつアメリカの女優が実施したことを公表し、話題となった。最近の報告では、乳癌と卵巣癌患者の5~10%に遺伝的要因が強く関与していると考えられている。特定遺伝子の病的変異が原因となって発症する乳癌、卵巣癌は、遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome)とよばれる。HBOCの原因遺伝子とされるものにはBRCA1とBRCA2があり、遺伝性乳癌の約50%がBRCA1遺伝子の変異によるものとされる。HBOCの医療システムづくりを目ざす日本HBOCコンソーシアムによると、遺伝子変異が子に受け継がれる確率は性別に関係なく50%とされている。
 2013年(平成25)10月時点では、日本で遺伝性乳癌・卵巣癌に関する検査および予防的乳房切除を保険診療下で行うことはできない。しかし、自由診療でHBOCの早期発見に不可欠な遺伝子検査・遺伝カウンセリングを受けることは可能で、全国37施設で実施されている。また、予防的乳房切除を実施している病院もあるが、遺伝的素因に関する倫理的問題を含め、健康な乳房の切除が支持されない場合も多い。しかし、遺伝カウンセリングに基づく遺伝子検査により遺伝子が検出された場合、予防的乳房切除を行うことで乳癌発症の可能性は確実に低くなるため、卵巣癌の予防的卵巣・卵管切除も含めて複数の医療施設での導入が計画されている。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

新華社

中華人民共和国の国営通信社。新華通訊社が正式名称。 1931年延安で創立され,48年北京に移り,現在は政府国務院新聞総署の管轄下にある。特に文化大革命以後は重要度が高まり,党と政府の発表はここを通じて...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android