乳がんの外科療法(手術)によって失われた乳房を形成外科の技術によって再建する手術法。自家組織を用いる方法と人工乳房(インプラント)を用いる方法があり、乳房切除術と同時に行う一次再建と切除術後期間をあけて行う二次再建に分けられる。手術を担当するのはおもに形成外科医である。
自家組織による再建では、おもに腹部や背中の組織を移植し、乳房の形状を再現する。腹部の組織を移植する方法には腹直筋皮弁法(皮膚、脂肪、筋肉の一部に血管をつけた状態で胸部に移植する)と穿通枝(せんつうし)皮弁法(脂肪のみを血管をつけた状態で胸部に移植する)があり、背中の組織を移植する方法には広背筋皮弁法(皮膚、脂肪、筋肉の一部に血管をつけた状態で胸部に移植する)がある。
人工乳房による再建では、皮膚を伸ばすエキスパンダーを胸部の筋肉下に挿入し、その内部に生理食塩水を注入して乳房の形に膨らませ、エキスパンダーを人工乳房に入れ替える。乳房切除術の際にできた手術創を利用して再建手術を行うため、新たな創はできない。人工乳房はシリコン製で安全性に優れ、その後のマンモグラフィ検査にも影響しない。また、乳房を再建することで再発が増えたり、再発の診断に影響したりすることはない。一方で、人工物を体内に留置することになるため、術後の治療や放射線療法への影響や、感染や組織の壊死(えし)などの合併症のリスクなどについても、十分な評価と準備が必要と考えられている。
乳房再建術は、治療によって変化した外見を補い、術後の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ、QOL)の維持や乳房を失うことで生じる心理的ショックを和らげることを目的に行われるもので、実施は患者の希望に基づくが、乳房切除を行うすべての女性において検討されるべきものである。
[渡邊清高 2019年10月18日]
乳房切除後の患者さんにとっては、胸の左右差をカバーするための下着をさがさなければならないことや、他の人と温泉に入ることが
近年乳房切断術後に再建手術を行うことが健康保険適応となりました。乳房再建術には
1.手術と同時に再建を行う1期的再建術
2.手術後数カ月経ってから再建を行う2期的再建術
とがあります。切除した乳房を形成するために、
1.背中やおなかの組織を使う筋皮弁術を用いる方法
2.組織拡張器で乳房切除後の皮膚を数カ月かけて拡げてから人工乳腺(シリコン製)に入れ替える方法
とがあります。健康保険が使えるのは筋皮弁を用いる方法だけで、1期的、2期的いずれも健康保険が適応となります。人工乳腺はまだ保険適応とはなっていないので健康保険適応外となります。人工乳腺はかつては
いずれかの方法で乳房のふくらみが再建された後に、乳頭再建術を行います。乳房再建術は形成外科の高度な技術を要します。乳腺外科医と形成外科医とがいて、両者の信頼関係がよい病院で受けたほうが良い結果になるといえます。まだ数は多くはありませんが、乳房再建術は乳腺外科にとって必須のオプション手術となるでしょう。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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