二人静(能)(読み)ふたりしずか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「二人静(能)」の意味・わかりやすい解説

二人静(能)
ふたりしずか

能の曲目。三番目物。古い作品とされるが、作者不明。観世(かんぜ)、金春(こんぱる)、金剛喜多の四流現行曲。吉野山の神職ワキ)は、女(ツレ)に正月の神事に供える若菜を摘みにやらせる。そこへ1人の女(前シテ)が呼びかけ、写経供養を依頼して消える。驚いて報告する菜摘み女に静の霊がのりうつり、蔵から昔の舞の装束を出させて着る。そのとき「菜摘みの女と思ふなよ」と呼びかけつつ、同装の静自身の亡霊(後シテ)が現れて2人で舞う。義経(よしつね)の吉野落ちの苦難、頼朝(よりとも)の前で舞をまったつらさを語り、義経への尽きぬ慕情を訴え、回向(えこう)を願って霊は離れていく。能面で視野のほとんどを失っている役者が、影に形の添うごとく一糸乱れずそろって舞うところにねらいがあり、技術的にむずかしい能である。

増田正造

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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