日本大百科全書(ニッポニカ) 「二色性色素」の意味・わかりやすい解説
二色性色素
にしょくせいしきそ
dichroic dye
色素を異方性のある媒質中に分散して配向させると、ある方向からは着色して見え、それと垂直な方向からはほとんど無色に見えることがある。このような現象を示す色素を二色性色素という。二色性色素のおもな用途は、ゲスト・ホスト液晶表示(GH表示、ホスト・ゲスト液晶表示ともいう)と、偏光フィルム(偏光板)である。偏光フィルムは、TNモード(TNはTwisted Nematicの略、ねじれネマチックともいう)の液晶表示で重要な機能材料の一つである。
GH表示の概念図を棒状の色素が、同様に棒状のホスト分子であるネマチック液晶中で(a-i)のように配向しているときは、(a-ii)のように特定の波長の光を吸収するために着色する。両端のガラス板の内側には透明導電膜があり、ここに電界をかけると、色素と液晶は(b-i)のように配向して、(b-ii)のようにほとんど吸収がなくなって無色に近くなる。
に示す。ゲスト分子のある物質に強度I0の単色光が入射して、その強度がIになって出てきたとする( )。このとき、次式で与えられるAの値を、吸光度(光学密度、光学濃度)という。
A=log10(I0/I)
において、(a-ii)の最大の吸光度をA//、(b-ii)のそれをA⊥と表したとき、次式で定義されるRを二色性比とよぶ。
R=A///A⊥
二色性比Rが大きい二色性色素の構造を に示す。
[時田澄男]
『時田澄男著『化学セミナー9 カラーケミストリー』(1982・丸善)』▽『詫摩啓輔・藤井志朗著『わかりやすい機能性色素材料――「光」の時代のキーマテリアル』(1999・工業調査会)』