異方性(読み)いほうせい(英語表記)anisotropy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

異方性
いほうせい
anisotropy

等方性の反対語。物理的性質方向によって異なることをいい,異方性をもつ物体異方体という。たとえば,立方晶系以外の結晶は光学的性質が結晶軸の方向に応じて異なる光学的異方体であり,光が入射すると常光線と異常光線とに分れて別々の方向に進むため複屈折を起す。このような結晶を通して物を見ると2重に見える。結晶以外でも,安息香酸コレステリルなどのように光学的異方性をもつ液体があり,液晶 (液状結晶) と呼ばれている。このほか,外力によりひずんだ物体,不均一に熱せられた物体,電場や磁場の中に置かれた物体などは,一般に物理的性質に関して異方性をもつ。

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百科事典マイペディアの解説

異方性【いほうせい】

物体の物理的性質が方向によって異なること。結晶は一般に異方性を示す。また外力でゆがんだ物体,不均一に熱せられた物体,電場・磁場内に置かれた物体など,ある方向に特別な条件のある物体も異方性をもつ。等方性の対。
→関連項目カー効果加工硬化結晶光軸光線三斜晶系

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大辞林 第三版の解説

いほうせい【異方性】

物質の物理的性質、例えば弾性や屈折率などが方向によって異なること。結晶、圧延した金属、プラスチックなどに現れる。 ⇔ 等方性

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

異方性
いほうせい

化学的な組成が一様な固体でも、原子レベルで調べてみると、原子が規則的に並んでいる場合(結晶)と規則性のない場合(非晶質、アモルファス)に分かれる。結晶では原子配列の方向性によってその性質も異なる。これを異方性という。これに対して、晶質の物質は特定の方向性はないので等方的である。たとえば、結晶では特定の方向に力を加えると割れやすい性質(劈開(へきかい)性)をもつものがある。非晶質ではこのような割れやすい方向がないので、一般に強靭(きょうじん)になり、テニスのラケットや釣り竿(ざお)などに利用されている。また、結晶が水晶のように特徴的な外形、結晶表面をもつのもこの異方性による。ガラスは非晶質であり、等方性の物質で、光に対して複屈折を示さないが、結晶はつねに異方性である。方解石の薄片を通して文字を見ると、複屈折のため二重に見える。光学的性質だけに限れば、岩塩やダイヤモンドなど立方晶系に属する結晶は等方性を示すが、これらの結晶もほかの性質の測定では異方性を現す。一般に結晶の異方性を総合的に観察してみると、異方性には対称性があることがわかる。たとえば、岩塩の性質はある結晶軸の回りに90度回転すると同じ性質を示すが、水晶の場合は60(120)度ごとになる。これらの結晶の特徴は対称面や対称中心、あるいは特定の軸の周りの回転対称によって特徴づけられる。このような対称性に基づいて分類すると、結晶の異方性には32種類(32結晶点群)あることが導かれる。ただし、結晶に限定しなければ異方性の種類は無限にある。[石田興太郎]
『堂山昌男編『単結晶――製造と展望』(1990・内田老鶴圃)』

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