手操網の一種。楕円形に縫った網地(網目3.6cm)の両末端に注連(しめ)網(藁網)をつけ,その付け根にさらに引綱を結び,縮結して網の中央を袋状にして魚を捕らえる漁網を指す。最初から円筒状の袋網を袖網につけた有囊網も一部ある。この網漁は天井網,返し網をもつ底引網漁と混同されやすいが,分類上は底引寄網漁の一つである。海底が平たんな砂泥質漁場でのタイ漁にもっぱら用い,その他キス,アジ漁にも使用する。操業は潮流の激しい昼間,1艘に3人乗った漁船8~10艘が出漁し,ほぼ等間隔に並列して行う。まず引綱の一方に結んだ浮樽を海面に投じて網をおろし,潮上に向かい新月状に回り込んで前の浮樽の所へもどり,これを引き上げる。それから船の移動を制御しつつ漁夫1人が棒,槌で玄側の板をたたいて魚を網に追い込み,残り2人が船首,船尾に分かれて引綱を手操り魚を捕る。この漁法は江戸時代初期,すでに瀬戸内海,筑前沿海に相当の発達をみた。網裾部が軽く海底に触れるように引くこの網漁は,現代でも改良ローラ五智網として,博多湾,北九州の一部で行われている。
執筆者:田島 佳也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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