改訂新版 世界大百科事典 「日本山海名産図会」の意味・わかりやすい解説
日本山海名産図会 (にほんさんかいめいさんずえ)
江戸中期の名産図会。1799年(寛政11)1月刊。5巻5冊。内題には《山海名産図会》とのみあるが,目録題は《日本山海名産図会》とされている。本文は木村蒹葭堂(けんかどう)の著とされ,画は蔀関月(しとみかんげつ)の筆。編著者蒹葭堂は大坂の人。酒造業を家職とし,かたわら学問を好み博学多芸,とくに物産の学に通じた。本書巻之一〈造醸(さけつくり)〉では,家職での知見を活用して酒の製法が詳述され,江戸期酒造業の実態の一こまをリアルに伝えている。本書全体を貫く明確な編集意図は見当たらず,各地の珍しい物産をアトランダムに収録しているが,その中には現代にもなお名声を伝えているものが多い。江戸時代には大坂を中心にして全国的規模での商品流通の展開をみるが,それを背景にして商人層をはじめ諸階層の間では日本各地の物産への関心が高まり,物産家が歓迎されて〈名物図会〉類の刊行となった。本書のほかに《日本山海名物図会》(平瀬徹斎著,1754刊),《五畿内産物図会》(如水亭大原東野編,1813刊)などの類書が著名である。
執筆者:葉山 禎作
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報