化学辞典 第2版 「亜ヒ酸」の解説
亜ヒ酸(塩)
アヒサン
arsenious acid(arsenite)
酸:H3AsO3(125.94).三酸化二ヒ素As2O3を亜ヒ酸ということがあるが俗称であり誤りである.三酸化二ヒ素の水溶液中に存在するとされる酸であるが単離されていない.三塩基酸で,水溶液は弱酸性を示す.K1 8×10-10,K2 1×10-12,K3 4×10-14.酸性水溶液中には三角すい型のAs(OH)3が存在する.酸性水溶液に硫化水素を通じると硫化ヒ素(Ⅲ)As2S3を沈殿する.この硫化物はアルカリ水溶液に溶けて,チオ亜ヒ酸塩(トリチオヒ(Ⅲ)酸塩)になる.空気中では安定であるが,還元剤としてはたらく.亜ヒ酸はまた各種のAs(OR)3型のエステルをつくる(R = CH3,C2H5,C6H5など).有毒.
塩:MⅠ3AsO3型のオルト塩のほか,MⅠAsO2型(メタ塩),MⅠ4As2O5,MⅠ6As4O9型などが知られている.[AsO2]-は三角すい型のAsO3が,2個のO原子をそれぞれ両側のAsO3と共有してつながった鎖状構造である.[As2O5]- は[O2-As-O-As-O2]型二量体構造である.市販のナトリウム塩はNaAsO2(メタ塩)で,防腐剤,染色用,殺虫剤などに用いられる.カリウム塩KH(AsO2)2は,医薬,分析用試薬などに用いられるほか,鏡の製造で銀を還元析出させるのに利用される.銅塩CuHAsO3は顔料,殺虫剤として用いられる.有毒.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報