交換性(読み)こうかんせい(英語表記)convertibility

改訂新版 世界大百科事典 「交換性」の意味・わかりやすい解説

交換性 (こうかんせい)
convertibility

ある通貨の所有者がそれを他の通貨(金を含むこともある)へ自由に交換でき,交換後の通貨の使用に何の制限も受けないとき,その通貨は完全な交換性をもつという。しかし,交換の主体や通貨の取得・使用の対象が,非居住者と居住者,経常取引と資本取引のどの範囲に限定されるか,あるいは交換比率が固定されているか否かなどに応じて,さまざまな形態の交換性を考えることができる。第2次大戦後に用いられたおもな交換性の概念は以下の二つである。(1)非居住者が経常取引によって取得した通貨を,安定した為替相場により自由に他通貨へ交換することを認めるもので,1958年12月に西ヨーロッパ15ヵ国(ギリシアアイスランド,およびトルコを除く欧州決済同盟European Payments Union(EPU)参加14ヵ国とフィンランド)が交換性を回復したといわれるのはこの例である。日本も60年7月に非居住者自由円勘定自由円)を創設して,この意味での円の交換性を回復した。これらの措置は,その後の多角的な貿易発展を可能にした点で歴史的意義をもつものであった。(2)旧IMF国際通貨基金)協定(第2次改正前のもの)では,第8条(第2~4項)の義務を受諾する旨IMFへ通告した国(8条国)の通貨を交換可能通貨と呼んでいた。8条国とは経常取引の支払に対する制限,差別的通貨取決め,および複数通貨取決めをすべて撤廃した国であり,そのような国の通貨は居住者,非居住者を問わず,外国為替市場を通じて経常取引の支払に必要な外国通貨へ自由に交換できるからである。61年2月には西欧10ヵ国が,また64年4月には日本が8条国に移行している(〈IMF〉の項参照)。

 なお旧IMF協定(第8条第4項)では,通貨当局相互間での直接的な通貨残高の交換を義務づけており,上記の市場交換性と区別する意味でこれは公的交換性と呼ばれた。しかしIMF協定第2次改正後は,この規定は実質的に適用を停止されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

知恵蔵 「交換性」の解説

交換性

ある通貨が他の通貨と交換が可能であること。IMFは加盟国に対し経常勘定取引について交換性を求めており、かつては米ドルが金に交換可能であったことと併せ自由貿易体制を支えていた。米ドルの金との交換性はブレトン・ウッズ体制崩壊で失われたが、新興国経済の成長と相まって経常勘定に加え資本勘定取引の交換性を求める動きが強まった。しかし、アジア通貨危機以降、資本コントロールを段階的に自由化すべきとの考え方も力を得ており、IMFも慎重である。なお、東アジアで今後地域金融協力を進めて行く上で、域内の各通貨が徐々に交換性を持つ必要がある。

(絹川直良 国際通貨研究所経済調査部長 / 2007年)

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