日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
人獣共通感染症リサーチセンター
じんじゅうきょうつうかんせんしょうりさーちせんたー
北海道大学が2005年(平成17)4月に設置した、人と動物に共通する感染症の研究・教育機関。牛海綿状脳症(BSE)、重症急性呼吸器症候群(SARS(サーズ))、中東呼吸器症候群(MERS(マーズ))、エボラ出血熱、新型インフルエンザなど、もともとは野生動物の病原微生物が家畜やペットを介して人間に感染する人獣共通感染症が増えている。いずれも新顔の感染症だけに原因動物、経路、対策や薬などの研究は不十分である。そこで、当センター統括の喜田宏(きだひろし)(1943― 、北海道大学名誉教授)らは、日本および世界のために、医学、獣医学、薬学、工学、理学などの幅広い分野の専門家が協力する、人獣共通感染症に特化した研究・教育機関が必要と考えた。アジア、アフリカなどの発生地域から診断・研究材料を入手して、予防や制圧法、病原体の遺伝子構造などを解明し、データベース化を目ざすとともに、内外の研究者や技術者対象の研修コースを企画、人獣共通感染症対策の専門家を育てる。そのために国際疫学部門、分子病態・診断部門、生物製剤研究開発室など9部門を設置して、アフリカのザンビアに研究拠点を設けている。
[田辺 功 2016年6月20日]