人知原理論(読み)じんちげんりろん(その他表記)Treatise Concerning Principles of Human Knowledge

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人知原理論」の意味・わかりやすい解説

人知原理論
じんちげんりろん
Treatise Concerning Principles of Human Knowledge

イギリスの哲学者ジョージ・バークリー主著で,1710年彼が 25歳のとき公刊された。 J.ロック認識論における精神に依存した観念と,それ自体独立して存在する物との間の二元論という困難を克服すべく,彼は物的実体の形而上学的存在を否定して,物がただ,その精神のうちで知覚された内容としての観念としてのみあるということを主張する。つまり物的対象は観念あるいは観念の集合なのであり,実在性は,精神,観念および物的対象からなるのではなく,精神とそれがつくりだす観念とからなるとして,主観的観念論立場をとった。しかし,この観念が,一定秩序をそなえていることから,本来的にはそれが有限な人間の精神の所産ではなく神の精神の所産とし,人間の観念は神の精神に存する永遠な観念の模型であり,したがって外界は神の観念として存すると考えた。

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世界大百科事典(旧版)内の人知原理論の言及

【バークリー】より

…政府の援助が続かず計画は挫折したが,1734年にはアイルランドのクロインの司教に任ぜられ,教区の住民に対する布教,救貧,医療に力を尽くした。哲学の著作としては20歳代半ばに発表した《視覚新論》(1709)と《人知原理論》(1710)がとくにすぐれている。しかしこの2著で展開された非物質論の哲学にしても,近代科学の〈物質〉信仰を無神論と不信仰の源とみなし,これに徹底的な批判を加えたもので,背後には護教者の精神が一貫して流れている。…

※「人知原理論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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