仏師系図(読み)ぶっしけいず

改訂新版 世界大百科事典 「仏師系図」の意味・わかりやすい解説

仏師系図 (ぶっしけいず)

語義からすれば仏像製作を職業とする家の系譜であるが,美術史の上では平安時代中期に活躍した定朝を始祖とした慶派,七条仏所の木仏師の正系およびそれに準ずる人々の家系順序に従って系譜としたものをさす。定朝を始祖とする点では院派,円派という家系もあるが,伝わっていない。現在知られ,刊本とされている七条仏所の系図としては次のようなものがある。(1)墨水遺稿A本 黒川春村編纂になる《墨水遺稿》の巻三に収録されているもので,七条中仏所伝来と伝え,24代康住までを載せる。《歴代大仏師正統系図》という。(2)墨水遺稿B本 同じく《墨水遺稿》巻三に載せるもので,七条仏所の庶流の家に伝わったものという。8代康運までを記する。(3)田中家本 慶派の末流と称する田中主水家に伝わった系図で,21代康正の子,康英より分かれた家系のもので,32代康元までを収める。《日域大仏師正統系図》と題する。(4)京都国立博物館本 仏師竹内右門家に伝来し,1900年に当時の恩賜京都博物館へ寄贈されたものである。24代康知の子,左京より分かれた家系を記す。《本朝大仏師正統系図》と題する。(5)美術研究所収本 東京国立文化財研究所(旧,美術研究所)発行の《美術研究》第11号に載せるもので,37代勝太という明治期の人物までを載せるものは他に見当たらない。《本朝大仏師正統系図幷末流》と題する。(6)金光寺本 仏師定朝の宅地跡に建てられ,七条仏所と密接な関係があったという金光寺(京都市下京区にあった時宗の寺で,七条道場とも呼ばれたが,1908年円山の長楽寺合併)に所蔵されるもの。毛利久が《仏教芸術》第59号(1965年12月)に紹介した。27代康伝までを載せる。《本朝大仏師正統系図幷末流》と題する。これらの諸本はどれも正統と称するが,いずれも途中から分かれていたり,錯簡があったりしており,いずれが本来の正統かはっきりしない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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