伊行末(読み)いぎょうまつ

改訂新版 世界大百科事典 「伊行末」の意味・わかりやすい解説

伊行末 (いぎょうまつ)
生没年:?-1260

鎌倉初期の石工。〈いのゆきすえ〉とも読む。中国明州(浙江省寧波)の出身で,東大寺再興に当たって来日。大仏殿講堂石壇,四面回廊,法華堂前の石灯籠(1254)を造ったと伝える。奈良大蔵寺層塔(1240),般若寺十三重塔(1253)は彼の確実な作品として現存する。彼の家系は,奈良の石工として般若寺笠塔婆を造ったその子伊行吉,以後1299年(正安1)に京都サンタイ石仏を造った末行,14世紀には大工薩摩権守行経,行恒,行長などの名が知られ,中国伝統の技術に日本的洗練を加えて活躍したことが察せられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「伊行末」の解説

伊行末 い-ぎょうまつ

?-1260 南宋(中国)の石工。
鎌倉時代のはじめ来日して東大寺の再興にあたる。大仏殿内の両脇侍像,中門の獅子(しし)などが,その一門の作とつたえられる。さらに奈良の大蔵寺や般若(はんにゃ)寺の十三重石塔をつくった。その子孫も石工,仏師として活躍した。文応元年7月11日死去。浙江省出身。「いの-ゆきすえ」ともよむ。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の伊行末の言及

【伊行末】より

…鎌倉初期の石工。〈いのゆきすえ〉とも読む。中国明州(浙江省寧波)の出身で,東大寺の再興に当たって来日。大仏殿や講堂の石壇,四面回廊,法華堂前の石灯籠(1254)を造ったと伝える。奈良の大蔵寺層塔(1240),般若寺十三重塔(1253)は彼の確実な作品として現存する。彼の家系は,奈良の石工として般若寺笠塔婆を造ったその子伊行吉,以後1299年(正安1)に京都サンタイ石仏を造った末行,14世紀には大工薩摩権守行経,行恒,行長などの名が知られ,中国伝統の技術に日本的洗練を加えて活躍したことが察せられる。…

【石仏】より

…他に群馬県不動寺不動明王像(凝灰岩,丸彫)などがあり,大型の石室構造をもつものに奈良市十輪院石仏龕(花コウ岩)がある。またこの時代には東大寺の再建工事に参加した伊行末(いぎようまつ)に代表される宋人石工の活躍があり,伊行末の作品に般若寺十三重石塔初層四方石仏,石仏ではないが参考とすべきものに1196年(建久7)宋人石工字六郎作の東大寺南大門石獅子がある。南北朝時代以後になると石仏は全体的に小型のものが増え,その作風は同時代の木彫像と同様に形式化の道をたどった。…

※「伊行末」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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