日本大百科全書(ニッポニカ) 「伸長成長」の意味・わかりやすい解説
伸長成長
しんちょうせいちょう
植物の茎や根が縦方向に伸びる成長をいう。双子葉植物の芽生えでは、普通、まず下胚(かはい)軸が伸びて茎の第1節間となり、子葉が開いてから上胚軸が伸長し始める。しかし、エンドウのように下胚軸の伸長がなく、いきなり上胚軸の伸長が始まるものもある。茎では、葉ごとに節を形成し、その伸長は節間単位でおきる。これを節間成長という。単子葉植物であるイネやトウモロコシなどの芽生えでは、中胚軸が第1節間となるが、この部分の伸長は、土壌中(暗黒)でのみおこり、光が当たると停止してしまう。また、単子葉植物でも、茎の伸長は節間ごとに行われる。
茎を形づくっている細胞は、すべて茎頂の細胞分裂活動の結果としてつくられたものである。茎頂では、葉原基が一定の間隔で分化し、一つの葉原基と次の葉原基との間は、将来の節間である。したがって、茎頂は節間が圧縮された状態にあるといえる。この節間の伸長が茎の伸長成長をもたらすわけである。若い節間には細胞分裂の盛んな部分(介在分裂組織)があり、細胞は主として茎の縦軸方向に増加する。しかし、節間の実質的な伸長にあたっては、このような細胞の増加も必要であるが、むしろ、個々の細胞の伸長がより大きく関与しているといえる。
根における伸長成長も、根端で増殖した細胞が下方に押しやられ、細胞伸長をすることによっておこる。こうした伸長成長は、光、温度などの環境要因や、ホルモンなどの内的要因の調節を受けるものである。
[勝見允行]