余桃の罪(読み)よとうのつみ

精選版 日本国語大辞典 「余桃の罪」の意味・読み・例文・類語

よとう【余桃】 の 罪(つみ)

(「韓非子説難」の故事による) 主君寵愛がある時に、食い残しの桃を献上して喜ばれることがあっても、寵愛が薄れれば、その事を理由に罪を受けるということ。君寵(くんちょう)が気まぐれで頼みがたいことをいうたとえ。
※中右記‐嘉承元年(1106)一〇月二二日「依人異事、憲法有差別。余挑之罪、自然可知。道路以目。無於口歟」

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デジタル大辞泉 「余桃の罪」の意味・読み・例文・類語

余桃よとうつみ

君主寵愛ちょうあいの気まぐれなことのたとえ。衛に弥子瑕びしかという少年がいて、主君から非常にかわいがられ、主君とともに果樹園に遊び、桃の食べかけを主君に献じたところが、大いに喜ばれた。しかし、その後主君の寵は薄れ、そのことを理由に罰を受けたという「韓非子」説難の故事による。

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故事成語を知る辞典 「余桃の罪」の解説

余桃の罪

下々の者の運命が、上に立つ者の機嫌次第で大きく変わることのたとえ。

[由来] 「韓非子ぜいなん」で紹介されているエピソードから。紀元前六世紀ごろ、春秋時代の中国でのこと。えいという国の君主に気に入られている、という美男子がいました。あるとき、彼は病気の母を見舞うため、君主の馬車に勝手に乗って出かけました。君主の馬車を許可なく使った者は足切りの刑に処す、というのが、この国のきまり。しかし、この君主は、弥子瑕が親を思う気持ちからやったことだから、と見逃してやりました。また、別のとき、君主のお供をして果樹園に出かけた弥子瑕は、自分が食べている桃がとてもおいしかったので、半分を君主に差し出しました。その心遣いに、君主は大いに感激したものでした。ところが、やがて弥子瑕の容貌が衰えると、君主の寵愛も薄くなります。そして、とうとう、君主は「あいつは昔、わしの馬車を勝手に使い、『我にらわすに余桃もってす(わしに食べ残しの桃を食べさせた)』」と言って、罪に落としてしまったということです。

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