精選版 日本国語大辞典 「果樹園」の意味・読み・例文・類語
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果樹を栽培する園地のこと。昔、人類は、山野に自生する果樹から果実を得ていたが、それらを定住地の周辺や近くに栽培し、あるいは播種(はしゅ)して育て栽培することが有利であることを知った。さらに、これらの果樹は、園地に集めて行き届いた管理のもとに栽培すればさらに効率高い生産が得られることを知り、こうして果樹園の発展をみた。世界における古い文明の発生地エジプトでは、中王国時代(前21~前18世紀)にはすでにイチジク、ナツメヤシ、ブドウ園などがみられ、およそ紀元前1900年のベニ・ハッサンBeni Hasanの墓の出土品には、イチジク、ブドウが整然と植えられ、収穫する風景もみられる。日本では持統(じとう)天皇(在位686~697)によってナシ、クリの栽培が奨励されてはいるが、経済性をもった栽培が始まったのは紀州ミカン、甲州ブドウなどで、江戸時代になってからである。『草木六部耕種法』(佐藤信淵(のぶひろ)著、1832)にはミカン、ブドウ、カキ、モモ、その他20余種があげられている。
[飯塚宗夫]
果樹園の開設にあたって、果樹の種類を選定する条件として考慮すべきことは次の諸点であろう。自然環境としては、気温(平均・最低・最高気温など)、降霜、雨量(生育期間がとくに重要)、日光(強度)、風、土壌(深度、通気性、土壌酸度、土壌含水量、地下水位、肥沃(ひよく)度)、地形などであり、人為環境としては、農道、用水、排水、防風、機械化、出荷、加工などであって、これらを総合して決定すべきであろう。
[飯塚宗夫]
果樹を栽培する畑のこと。世界的にみると,すでに古代エジプトにその存在の記録が残されているが,日本での歴史は浅く,本格的な果樹園がつくられたのは明治時代以降のことである。それまではカキ,クリ,ウメなど多くの果樹は,主として自家消費用として庭先に植えられることが多く,わずかに甲州でブドウ,紀州でコミカン,越後でナシなどが小規模な果樹園で栽培されていたにすぎない。現在でも日本の果樹園は欧米諸国に比べると規模が小さく,傾斜地につくられたものが多い。種類別では,かんきつ園が多く,全果樹園面積の半分近く占める。
また果樹の栽培には防風林,盗難防止柵,仕立用の棚(ブドウ,ナシなど)や,傾斜地ではさらに運搬用のケーブルやモノレールなど各種の施設が必要とされる。果樹は永年生作物で,開花,結実を始めるまでに数年を要するので,果樹園経営は他の農業に比べると多くの資本投下が必要で,その回転効率も低い。ウンシュウミカンやリンゴでは投下した資本を償却し,累計収支が黒字になるまでに20年近くかかるといわれるから,開園には,気象条件や土壌条件を考慮し,消費の動向なども予測して樹種や品種の選定に慎重を期さなければならない。
執筆者:杉山 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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