供給関数 (きょうきゅうかんすう)
supply function
市場条件の変化に対応して売手の計画する供給量がどのように変化するかを関数の形に書き表したもの。数量調整に許される期間に応じて短期,長期が区別され,個別経済主体の個別供給関数と市場に集計量として現れる市場供給関数とが区別されるが,一般に,xiを第i財の供給量,pjを第j財の価格とするとき,供給関数はxi=Si(p1,p2,…,pj,…,pn)と表される。ただし,nは関連するすべての財の種類の数である。このうちxiに最も大きな影響を与えるのは,それ自身の価格pi,および第i財の生産に必要な生産要素の価格であるが,労働供給関数についてはすべての消費財の価格がとり入れられなければならないであろうし,多数の財を生産する可能性をもつ企業については,代替的な生産物や副産物の価格も関数の要素となる。この関数をpiとxiからなる平面に投影して描いたものは供給曲線supply curveと呼ばれる。したがって,pi以外の財価格の変化の影響は,供給曲線のシフトとなって現れる。市場供給関数は市場需要関数とともに市場均衡を記述するうえで重要な役割を果たす。
執筆者:林 敏彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
供給関数
きょうきゅうかんすう
supply function
ある財の供給量とその価格との関係を表わす関数。一般に財の供給量は価格が上昇すれば増加し,逆に価格が下落すれば減少すると考えられる。したがって供給量を横軸に,価格を縦軸にとれば,供給量と価格の関係は右上がりの曲線になる。これを供給曲線といい,供給関数はそれを関数式として理論的に表現したもの。一般に供給関数は供給者の利潤最大化行動から導き出される。しかし利用可能な市場での取引数量,価格などのデータは,常に売りと買いの一致した結果として与えられており,潜在的な需給の変動は表面に表われていないことなどから,通常は供給関数,供給曲線を特定化しえないことが多い。時系列的な取引数量,価格の変化も,需要曲線の変化によるものか,供給曲線の変化によるものかを通常決定しえない。計量経済学ではこれを認定の問題というが,利用可能なデータがいわば見かけ上の均衡点として与えられているためである。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の供給関数の言及
【一般均衡理論】より
…いま生産者が技術的に可能な生産計画の中で利潤を最大にするものとすれば,最適な計画は諸価格に依存して決定される。このようにして,生産物に対する供給関数と生産要素に対する需要関数が求められる。すべての価格が同じ比率で変化しても,最適な生産計画は変わらないと考えられるから,これらの関数はある財の価格を1としたときの値を与えるだけで定まってしまうことに注意しておこう。…
※「供給関数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」