兄部(読み)コノコウベ

デジタル大辞泉 「兄部」の意味・読み・例文・類語

こ‐の‐こうべ〔‐かうべ〕【部】

《「このかみべ(子の上部)」の音変化》
力仕事に当たる力者りきしゃの長。
中世、院・門跡武家などに仕えて雑務に従った力者の長。
中世、宮中駕輿丁座かよちょうざの長。

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精選版 日本国語大辞典 「兄部」の意味・読み・例文・類語

こ‐の‐こうべ‥かうべ【兄部】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「こうべ」は「かみべ(上部)」の変化した語。「子の上部(かみべ)」の意 )
  2. かしらとなる人。主として、力仕事にあたる力者(りきしゃ)のかしらをさす。〔伊呂波字類抄(鎌倉)〕
    1. [初出の実例]「兄部(コノコウベ) 禁中の下官の官人也、力者の長を云と」(出典譬喩尽(1786)五)
  3. 中世、寺社従者で、主として力仕事にあたる力者のかしら。〔運歩色葉(1548)〕
  4. 中世、院、門跡、武家に仕えて、力役雑務に従った力者の長。
    1. [初出の実例]「大府宣 太宰府廰官人等 定補鎮西鋳物師兄部職事」(出典:筑前平井文書‐弘安元年(1278)一二月日・大府宣案)
  5. 中世、宮中の駕輿丁座(かよちょうざ)の長。左右近衛府、左右兵衛府の四府に各一人いて、その下に沙汰人、座人がいた。
  6. 中世、寺社に隷属した諸座の統率者。
    1. [初出の実例]「当門跡座蘖皮座新座当年四月より再興之、兄部番条之三郎五郎也」(出典:大乗院寺社雑事記‐文明三年(1471)一一月二七日)

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世界大百科事典(旧版)内の兄部の言及

【土器座】より

…赤土器は食器に,白土器は食器または灯明皿等に用いられた。座の統轄者は兄部(このこうべ)または作手,一般座衆はこれに対し座子と呼ばれた。両者ともに一乗院,大乗院という興福寺別当の地位を独占的に有する両門跡に従属し,人夫役等の諸役を免除され,赤土器座の兄部は荘園の所領を給されるなど特典を与えられる一方,その課する役をつとめていた。…

※「兄部」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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