平安末期以降の文書様式の一つ。大宰府庁宣旨の略称。大宰府の府務を請け負う官長(帥,権帥,大弐のうち1人)が府在庁官人に府務を指令する文書。差出書を〈大府宣〉または〈庁宣〉と書き出し,位署は官長の単署であり,様式は国司庁宣と共通している。府発給の下達文書としては,8~10世紀には公式令に定める大宰府符(官長と典1人の位署),11世紀には官長の袖判をもつ大宰府政所下文(大監以下の在庁官人連署)が使われ,所管の九州諸国へ下した。府政所下文は,官長が口頭命令(宣旨)をもって在庁官人に命じて発給させ,その袖に官長が確認の証判を加えた形式であるが,12世紀になると官長は府に下向しなくなり,京都から大府宣をもって府務を行うようになる。つまり大府宣は,府政所下文における官長の口頭命令を文書化したもので,所管の諸国へは袖判のない府政所下文をもって施行された。なお大府宣の初見は,《朝野群載》所収の保安4年(1123)12月7日付のものである。
執筆者:富田 正弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…その淵源は二つに分けられる。一つは奈良時代に,仰せ,命令の意で広く用いられていた宣の系譜を引く内侍宣(ないしせん),宣旨(せんじ),口宣案(くぜんあん),官宣旨(弁官下文),国司庁宣,大府宣などである。内侍宣は,天皇に近侍して奏宣をつかさどる内侍司の女官が天皇の仰せを伝えるものであるが,薬子の変を機に蔵人所が置かれ(810),蔵人が天皇の仰せを,太政官の上卿に伝えるようになった。…
※「大府宣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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