中島敦(あつし)の中編小説。副題に「五河荘(ごかそう)日記抄」とある。原題は『ツシタラの死』。『文学界』1942年(昭和17)5月号に掲載。同年7月、同名の作品集を筑摩(ちくま)書房より刊。『宝島』などの作者R・L・スティーブンソンの、サモア島における晩年の生活を、書簡、手記などを素材にして再構成しつつ、中島自身の死生観、文学観などを投影したもの。植民地南洋を舞台とするものだったため、時局的な作品と一部からみられる不幸もあったが、その本質は、デーモンに憑(つ)かれた芸術家の内面を鮮烈に描く秀作である。この年上半期の芥川(あくたがわ)賞候補作(この期受賞作なし)となった。
[佐々木充]
『『日本の文学36 中島敦他』(1972・中央公論社)』
ユーラシア大陸、北アメリカ大陸北部に広く分布し、日本では北海道にエゾヒグマが生息する。成獣は体長2メートル以上、体重300キロにもなり、日本最大の陸生動物として知られる。雑食性で草や木の実、サケ、シ...