中島敦(あつし)の短編小説。『文学界』1942年(昭和17)2月号に、短編『文字禍』とともに『古譚(こたん)』という総題の下に載る。同年7月、筑摩(ちくま)書房刊『光と風と夢』に収録。中島敦のデビューを告げる作品。原稿では前記2編のほか『狐憑(きつねつき)』『木乃伊(みいら)』をあわせ全4編で『古譚』を形成。ともに古代世界を舞台とし、尋常ならぬできごとが展開する短編である。芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)の再来という評もあった。ことに『山月記』は、中国唐代の伝奇『人虎伝(じんこでん)』を素材として、「詩をつくること」にとらわれてしまった人間李徴の劇的な運命を、虎(とら)と化しながらなお人間の心をもつという臨界状況の下に描く佳作である。
[佐々木充]
『『李陵・山月記』(新潮文庫)』▽『『李陵・弟子・山月記』(旺文社文庫)』
…今も出没して人畜を襲うことがあるが,一方またその毛皮が珍重されるので,利害両面よりしてトラと人間との交渉を語る俗信や伝説も多い。例えば,中島敦の《山月記》の物語のように,人が突然に発狂して山中に入り,化してトラとなったという話は古くからあり,とくに西南の異民族間にこの伝承が多く,トラを勇猛無類のものとしてこれに変身することを願ったものか。またトラに食われた人の霊魂はトラの配下となって使役される,これを〈倀鬼(ちようき)〉または〈虎倀〉と称した。…
…持病の喘息悪化のため,転地療養を兼ねて41年パラオの南洋庁に赴任するが,健康を害して翌年帰京。唐代の伝奇《人虎伝》を素材にした《山月記》が深田久弥の推挽で42年2月の《文学界》に掲載されて文壇にデビュー。同年5月発表の《光と風と夢》も好評で以後創作に専念。…
※「山月記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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