光ピンセット(読み)ヒカリピンセット

デジタル大辞泉 「光ピンセット」の意味・読み・例文・類語

ひかり‐ピンセット【光ピンセット】

強力なレーザーを用いて微粒子捕捉・移動する技術または装置。レーザーの焦点近傍に電場の勾配が生じ、誘電体と見なせる微粒子に対し、焦点に引き寄せられる力がはたらく原理を利用する。扱える微粒子の大きさは数ナノメートルから数マイクロメートル程度で、たんぱく質酵素ウイルス細菌などを破壊せずに取り扱うことが可能となる。
[補説]1986年に米国のA=アシュキンが開発。同業績により、2018年にノーベル物理学賞を受賞した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「光ピンセット」の意味・わかりやすい解説

光ピンセット
ひかりぴんせっと

レーザー光を用いて、微小物体を捕獲し、さらに移動させる技術または装置のこと。英語でlaser optical tweezersといい、LOTと略される。光学顕微鏡でレーザー光を集光して照射した焦点付近に、透明なナノメートルからマイクロメートルサイズの誘電体微粒子があると、レーザー光が誘電体の媒質の違いにより屈折し、その反作用で放射圧として誘電体微粒子を焦点の方向に動かすという原理を利用している。ナノメートルサイズの微粒子を非接触で捕獲できるので、タバコモザイクウイルス大腸菌などの生体細胞の操作にも応用されている。またナノマシンの製造にも分子モーターの開発などで利用されている。今後さらに生物学工学医学での応用が期待されている。

[山本将史 2022年7月21日]

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知恵蔵mini 「光ピンセット」の解説

光ピンセット

レーザーの光が物体に当たる際に生じる力(放射圧)を利用し、粒子や細胞などを捉えて動かす装置、または技術のこと。非接触でナノメートル(ミリメートルの100万分の1)サイズの粒子等を捕獲したり、生きたままの細胞を傷つけずに観察したりすることができる。生物学や工学、医学などの分野で応用されている。元米ベル研究所のアーサー・アシュキンが1980年代に発明し、アシュキンはこの発明と応用の実績から2018年のノーベル物理学賞を受賞した。

(2018-10-4)

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