アメリカの作家フォークナーの長編小説。1932年刊。ヨクナパトーファ物語の一つ。自分の血に黒人の血が混じっているかもしれぬというあいまいな立場のために、黒人対白人という現実の社会のなかでアイデンティティを失い、自己の本体を求めてアメリカ国中を放浪し、ついにジェファソン町(ヨクナパトーファ郡の架空の町名)の外れにひとり住む親黒人派の老嬢ジョアナ・バーデンを犯し、殺害してしまうジョー・クリスマスの短い生涯を中心に描かれる。この殺人事件が起きたころ、自分を身ごもらせた男を追って旅しつつあった「自然の女神」のような女リーナ・グローブ、南北戦争のためにゆがんだ生活を余儀なくされている牧師ゲール・ハイタワーらの物語を対照的に配置し、疎外状況にある人間の運命とその救済の主題を深く追求している。
[大橋健三郎]
『加島祥造訳『8月の光』(『世界文学全集30』所収・1964・新潮社)』
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