八月の光(読み)ハチガツノヒカリ(その他表記)Light in August

デジタル大辞泉 「八月の光」の意味・読み・例文・類語

はちがつのひかり〔ハチグワツのひかり〕【八月の光】

《原題Light in Augustフォークナー長編小説。1932年刊。禁酒法時代の米国南部の架空の郡を舞台に、人種問題に起因する青年孤独悲劇を描く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「八月の光」の意味・わかりやすい解説

八月の光
はちがつのひかり
Light in August

アメリカの作家フォークナーの長編小説。1932年刊。ヨクナパトーファ物語の一つ。自分の血に黒人の血が混じっているかもしれぬというあいまいな立場のために、黒人対白人という現実の社会のなかでアイデンティティを失い、自己の本体を求めてアメリカ国中を放浪し、ついにジェファソン町(ヨクナパトーファ郡の架空の町名)の外れにひとり住む親黒人派の老嬢ジョアナ・バーデンを犯し、殺害してしまうジョー・クリスマスの短い生涯を中心に描かれる。この殺人事件が起きたころ、自分を身ごもらせた男を追って旅しつつあった「自然の女神」のような女リーナ・グローブ南北戦争のためにゆがんだ生活を余儀なくされている牧師ゲール・ハイタワーらの物語を対照的に配置し、疎外状況にある人間の運命とその救済主題を深く追求している。

大橋健三郎

『加島祥造訳『8月の光』(『世界文学全集30』所収・1964・新潮社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「八月の光」の意味・わかりやすい解説

八月の光
はちがつのひかり
Light in August

アメリカの小説家ウィリアム・フォークナーの小説。 1932年刊。南部の町ジェファーソンを背景に,北部出身で黒人びいきの女性ジョアナ・バーデンを殺害した混血の黒人ジョー・クリスマスのリンチ事件を描きながら,人間疎外と自己探求のテーマを取上げ,同時に南部人の意識をゆがめるピューリタニズム人種差別を告発したもの。自分を捨てた男を捜してこの町を訪れる臨月を迎えた女リーナ・グローブの牧歌的物語をクリスマスの暗い物語と交錯させて効果をあげている。

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