グローブ(読み)ぐろーぶ(英語表記)Lefty Grove

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グローブ」の意味・わかりやすい解説

グローブ(Lefty Grove)
ぐろーぶ
Lefty Grove
(1900―1975)

アメリカのプロ野球選手(左投左打)。本名Robert Moses Grove。大リーグ(メジャー・リーグ)のフィラデルフィア・アスレチックス(現オークランド・アスレチックス)、ボストン・レッドソックスに投手として1925年から41年までプレーし、左腕からの煙を吐くような快速球は「スモークボール」といわれ、そのボールを武器に数々のタイトルを獲得、史上最高の左腕投手の一人といわれる。

 3月6日、メリーランド州のロナコニングに生まれる。ボルティモア・オリオールズのマイナー球団に所属し、4年半で109勝36敗の成績をあげた後、1925年にアスレチックスと、当時のスター選手のベーブ・ルースを6000ドル上回る、10万6000ドルの契約金で入団。大リーグ1年目から7年連続最多奪三振を達成し、3年目から7年連続20勝を記録した。エースとしてアスレチックスのワールド・シリーズ2連覇(1929、30)に貢献、1929年の対シカゴ・カブスとのワールド・シリーズでは、リリーフとして登板して2セーブを記録した。1931年にはシーズン16連勝のアメリカン・リーグタイ記録(当時)を達成した。1934年、アスレチックスが経営難に陥ったためにレッドソックスにトレードされた。その年は左腕を痛めて8勝に終わったが、翌35年からカーブ主体の技巧派に変身して、次の5年間で4回の最優秀防御率のタイトルを獲得した。1940年と41年にはそれぞれ7勝しかあげられなかったが、史上12人目の通算300勝を達成して引退した。オールスター・ゲームには6回出場している。

 17年間の通算成績は、登板試合616、投球回3940と3分の2、300勝141敗、防御率3.06、奪三振2266、完投298、完封35。獲得したおもなタイトルは、最多勝利4回、最優秀防御率9回、最多奪三振7回、MVP1回。1947年に野球殿堂入り。

[出村義和]


グローブ(William Robert Grove)
ぐろーぶ
William Robert Grove
(1811―1896)

イギリスの物理化学者、法律家。1832年オックスフォード大学卒業後、自然科学に転じ、1840年王立協会会員、1841~1846年ロンドン大学教授、また1875~1887年高等裁判所判事を務めた。1839年にグローブ電池を発明した。これは、最初の実用的な二液式電池であるダニエル電池と同じ二液式で、その倍近い起電力(約2ボルト)があり、後のブンゼン電池につながった。また著書『物理諸力の相関』Correlation of Physical Forces(1846)は「エネルギー保存則」の、いわゆる「同時発見」の一例としても著名である。

[宮下晋吉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グローブ」の意味・わかりやすい解説

グローブ
Grove, Sir William Robert

[生]1811.7.11. ウェールズ,スウォンジ
[没]1896.8.1. ロンドン
イギリスの法律家,物理学者。オックスフォード大学,リンカーン法学院で学び,弁護士の免許を得た (1835) が,健康を害したこともあって科学研究に転じ,ロンドン・インスティチューションの物理学教授となる (1840~47) 。後年,再び司法界に地位を占め,高等民事裁判所判事をつとめた (71~87) りした。司法界引退後は科学研究に専念。分子内原子の熱解離を確証し,高温白金線上で水が水素と酸素に分解することを示した。 1839年水素-酸素燃料電池を発明し,これでアーク灯を点じた。 H.ヘルムホルツに先んじて自然力の相互転換を説いた『物理的諸力の相互連関について』 On the Correlation of Physical Forces (46) は有名である。 72年にナイトの称号を贈られた。

グローブ
Grove, Frederick Philip

[生]1871.2.14. ロシア北部
[没]1948.8.19. オンタリオ,シムコー
イギリス系カナダの小説家。父はスウェーデン人,母はスコットランド人。ヨーロッパ各地を転々としたのち,1892年トロントへ渡り,長らく農場労働者や学校教師をしながら,自然主義的手法を用いカナダ大平原を舞台にした『沼沢地開拓者』 Settlers of the Marsh (1925) ,『日々の糧』 Our Daily Bread (28) ,『生の絆』 The Yoke of Life (30) などの小説を発表。晩年に出した『製粉場の主』 The Master of the Mill (44) は,世代の相克と近代産業社会の問題に正面から取組んだ,カナダ文学屈指の野心的な大作。自伝『自我を探究して』 In Search of Myself (46) はカナダ総督賞を受賞した。

グローブ
Grove, Sir George

[生]1820.8.13. ロンドン
[没]1900.5.28. ロンドン
イギリスの音楽学者。有名な『グローブ音楽辞典』 Dictionary of Music and Musicians (1879~89) 初版の編纂者。 1882~94年ロンドンの王立音楽院の初代院長をつとめ,82年サーの称号を授けられた。主要著書『ベートーベンと9つの交響曲』 Beethoven and His Nine Symphonies (96) 。

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