六祖壇経(読み)ろくそだんぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「六祖壇経」の意味・わかりやすい解説

六祖壇経
ろくそだんぎょう

中国、唐代の禅宗語録。禅宗第6祖慧能(えのう)が韶州剌史(しょうしゅうしし)韋拠(いきょ)の要請にこたえ、大梵寺(だいぼんじ)の戒壇(かいだん)で行った授戒説法を、弟子の法海(ほうかい)が記録したものとされているが、後人の付加部分も混入している。禅宗語録に仏陀(ぶっだ)の説法の呼称である「経」の字が用いられている例はほかになく、南宗禅の祖としての慧能に、仏陀と同等の地位と権威を与えようとした撰者(せんじゃ)の意図がうかがわれる。内容は慧能一代の行実とその説法を集録したもので、南宗禅の基本的立場とその特質を示す根本資料としてきわめて重視されている。テキストには現存最古で一巻本の敦煌(とんこう)本をはじめ、二巻本の恵昕(えきん)本系統や一巻本の徳異本や宗宝本の系統などがあり、異本間相互の異同著しい

[田中良昭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六祖壇経」の意味・わかりやすい解説

六祖壇経
ろくそだんきょう
Liu-zu tan-jing

中国の禅宗第6祖慧能 (えのう) の著。正しくは,『六祖大師法宝壇経』と呼び,唐の関耀1 (681) 年頃成立。異本が多数あるが,敦煌本が最も古い形を示している。内容は北宗禅に対して南宗禅の立場を明確に示したものであり,現在の禅宗各派の成立を調べるには不可欠の第一資料である。

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世界大百科事典(旧版)内の六祖壇経の言及

【慧能】より

…弘忍の十大弟子のうち,神秀(じんしゆう)その他が則天武后の時代に,長安や洛陽の地に進出,主として上層貴族に迎えられて,華厳や天台などの伝統仏教学と融合し,総合の傾向をとるのに対し,慧能は教外別伝の立場をとり,新しい地方文化の先駆となる。その言行を記す《六祖壇経》は,伝説的な部分が多いけれども,神秀が自己の心境を,〈身は菩提樹,心は明鏡の台,時々に払拭に努めて,塵埃を惹く莫かれ〉と歌い,当時なお一介の行者であった慧能が,〈菩提もとより樹なし,明鏡また台にあらず,本来無一物,何処にか塵埃を惹かん〉と応じたという話は,2人のちがいを明示する。近代,敦煌で発見されたそのテキストは,中世中国思想史の研究に大きい進歩を促した。…

【題壁詩】より

…唐代詩人にも〈壁に題す〉と題がつけられているものが数多くあるが,すべて〈題壁詩〉である。初唐の人である慧能(えのう)(南宗禅の始祖)が,〈本来無一物〉の句を含む悟境を示す詩を題壁して,五祖弘忍(ぐにん)に認められ,ついに六祖の衣鉢を与えられたという《六祖壇経(ろくそだんきよう)》の話はよく知られている。【鈴木 修次】。…

※「六祖壇経」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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