処女生誕(読み)しょじょせいたん(英語表記)virgin birth of Jesus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「処女生誕」の意味・わかりやすい解説

処女生誕
しょじょせいたん
virgin birth of Jesus

イエスには自然の父はなく,聖霊の力によってマリアに宿ったとするキリスト教正統派の基本的教義旧約聖書にはダビデ子孫のなかにメシアが現れるという預言が多くいわれ,また『イザヤ書』7章 14には「おとめがみごもって男の子を産む。その名はインマヌエル (神我らとともにいますの意) ととなえられる」と預言されていたが,聖霊による処女マリアの懐胎とイエスの生誕 (マタイ福音書1・18~25,ルカ福音書1・26~38) は,まさしくこの預言が成就されたものとして考えられた。またこの誕生物語の成立がほかの福音伝承より遅れていることから,歴史的事実の記述のみならず,旧約聖書の預言との関連において,あるいはキリスト仮現論を意識してキリスト論的立場から意図的に構成されているという説もある。この教義は2世紀までに教会全体に受入れられ,使徒信条にもとられて,少数の異端者を除き,19世紀のプロテスタント自由主義神学の台頭まで重大な挑戦は受けなかった。なおこの教義から派生して,イエスの出産時およびそれ以後のマリアの全生涯にわたっての処女性が説かれているが,「イエスの兄弟」という聖書の表現解釈をめぐって問題となっている。

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