日本大百科全書(ニッポニカ) 「分析的判断」の意味・わかりやすい解説
分析的判断
ぶんせきてきはんだん
das analytische Urteil ドイツ語
カントは、判断を分析的判断と総合的判断の2種に分けた。判断は、その主語の概念が述語の概念を含んでいるときに分析的であり、そうでないときに総合的であるとされた。たとえば、「物体はすべて空間的な広がりをもつ」は分析的であるが、「物体はすべてある重さをもつ」は総合的であるとされた。カントの区別の仕方は、「含む」というような表現があまりに比喩(ひゆ)的にすぎて明確でないこと、および主語―述語以外の形式をもつ文へは適用できないこと、などの理由から満足なものとはいえない。フレーゲは、分析的判断を論理法則と定義のみから導出されうるもの、と定義し直した。この定義は、論理実証主義に受け継がれたが、そこでは同時に、分析的判断とはその真偽が意味だけから判定されるもの、という別の定義とも重ね合わされた。クワインは、分析的―総合的という区別そのものの正当性を疑問視する強力な議論を展開し、活発な論議を呼び起こした。
[飯田 隆]