政治的用語としての正当(統)性は,政治的支配がもつところの正当な支配としてのその妥当性のことをいう。政治的支配はむきだしの暴力や強制だけによっては,その安定性を確保することはできない。この支配を安定して維持していくには,被支配者の側からの〈服従への意欲〉や同意を必要とする。こうした意欲や同意を調達してくれるのが,支配を正当なものとして受け入れさせる根拠としての正当性である。M.ウェーバーは正当的支配の3類型として伝統的支配,カリスマ的支配,合法的支配をあげたが,これらは支配秩序が正当であるとする人々の信念の類型による区別であって,支配秩序そのものの規範的評価を表すものではない。たとえば合法的支配の正当性にしても,それは法的手続を踏んだ支配を正当なものとみなすということであって,支配秩序そのものの実質的な正当性を保証するわけではない。それゆえ合法性=正当性という立場をとるかぎり,実質的にいかに非正当的で,非合理的で,正義に反する支配であろうとも,それが合法的手続を踏むかぎり,その政権掌握を阻止することはできなくなる(たとえばナチスの場合)。こうした実態を避けるためには,単なる合法性という〈形式的正当性〉を超える〈実質的正当性〉の内容的根拠づけという作業が必要になる。この問題は従来は主観的な価値判断に属する問題として,科学的な議論の対象からは外されてきた。しかし,最近ではたとえばJ.ハーバーマスのコミュニケーション理論などによって,規範的価値の客観的妥当性の根拠づけが試みられている。もっとも,なかには資本主義社会における〈正当性の危機〉は,政治的支配が何がしかの規範的基準からみて正当性を欠くという点にあるのではなく,資本主義国家の行為が市場経済の〈自然性〉という前提枠を超えられないでいるかぎり,その行為は規範的基準による評価の対象にはなりえないという点にある,と指摘する考え方もある。
→支配
執筆者:山口 節郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…しかし反対論もある。M.ウェーバーは,政治権力の正当(統)性の類型をカリスマ的支配,伝統的支配,合法的支配の3類型に分類し,近代法治国家においては,合法性がすなわち正当性となるとした。それに対しC.シュミットは,革命や非常事態においては,正当性と合法性が分離し,前者が後者に優先するとした。…
※「正当性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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