日本大百科全書(ニッポニカ) 「フレーゲ」の意味・わかりやすい解説
フレーゲ
ふれーげ
Gottlob Frege
(1848―1925)
ドイツの哲学者、数学者。現代の記号論理学の創始者である。その『概念文字』Begriffsschrift(1879)は、数学的証明の厳密な形式化がそのなかで遂行できる言語を提出したが、そこで初めて使用された変項と量化子による文の分析は、現代論理学をそれ以前の論理学から区別するものである。この形式言語を算術に適用する試みから、算術が自ら体系化した論理学から導出できることをみいだした。この発見を、ほとんど記号を用いずに展開したのが『算術の基礎』Die Grundlagen der Arithmetik(1884)である。この著作は、数に関するそれまでの哲学的所説に対する批判の鋭さと、その哲学的含蓄の深さからいって、古典的な価値をもつ。ついで、形式的体系のなかで算術を論理学から導出することに着手するが、その前に、その形式的体系の基礎についての考察をいくつかの論文の形で公刊している。これらの論文で展開された考えの多くは、いまなお言語哲学の中心問題をなすものである。論理学からの算術の導出を実際に遂行すべき彼の主著『算術の基本法則』Grundgesetze der Arithmetikは、第1巻が1893年に、第2巻が1903年に出版された。ところが、第2巻の出版直前に、自分の体系が自己矛盾を含むことをラッセルからの手紙によって知らされた。以後、矛盾を回避する方策を探したが、ついには論理学からの算術の導出という基本思想を放棄するに至り、失意のうちに没した。
[飯田 隆]
『石本新編『論理思想の革命』(1972・東海大学出版会)』▽『野本和幸「G・フレーゲの存在論」(『思想』第596号所収・1974・岩波書店)』