家庭医学館 「副甲状腺がん」の解説
ふくこうじょうせんがんじょうひしょうたいがん【副甲状腺がん(上皮小体がん) Parathyroid Cancer】
きわめてめずらしい病気で、その多くは、腫瘤(しゅりゅう)が小さくて、良性腫瘍(りょうせいしゅよう)である腺腫(せんしゅ)との区別がむずかしいのです。
副甲状腺近くのリンパ節や遠い臓器への転移などがあって、がんとわかる場合や、腫瘍を摘出してから、その組織を調べて、初めて、がんとわかる場合などがあります。
副甲状腺からは、副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌(ぶんぴつ)されています。副甲状腺がんにも、ホルモンの分泌がみられるもの(機能性という)と、そうでないものとがあります。
機能性がんでは、副甲状腺のはたらきが活発になり、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)(「副甲状腺機能亢進症(上皮小体機能亢進症)」)がおこります。
[症状]
副甲状腺ホルモンは、血液中のカルシウム量を調節するはたらきをしています。ところが、副甲状腺機能亢進症になると、骨などに蓄えられていたカルシウムが過剰に溶け出して血液中に入り、血中のカルシウム濃度が上昇するとともに、尿中に排泄(はいせつ)されます。
一方、リンはカルシウムと結合して尿中に排泄されるため、その血中濃度が低下します。
以上の結果、血液中の水分の割合が低くなり、のどが渇く、尿量が増えるなど、糖尿病とまぎらわしい症状が出てきます。
また、副甲状腺の機能がひどく活発になると、筋力の低下、食欲不振、吐(は)き気(け)、便秘、集中力の低下、うつ状態、意識障害などもおこります。
そのほか、カルシウムの増加によって、尿路結石(にょうろけっせき)や腎臓(じんぞう)への石灰の沈着がおこったり、カルシウムによる刺激で、膵炎(すいえん)や胃(い)・十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)もおこりやすくなります。
また、骨からカルシウムが溶け出すために、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)がおこり、骨折しやすくなります。
副甲状腺機能亢進症の原因の80%から90%は、良性腫瘍である腺腫によるものですが、がんによる場合には、これらの症状が急速に進むのがふつうです。
[治療]
CTスキャン、MRI、超音波検査などによって腫瘍が確認できたら、腫瘍のある副甲状腺を摘出します。