労働施策総合推進法(読み)ろうどうしさくそうごうすいしんほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「労働施策総合推進法」の意味・わかりやすい解説

労働施策総合推進法
ろうどうしさくそうごうすいしんほう

安倍晋三(あべしんぞう)政権が打ち出した働き方改革理念を定めた法律。正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(昭和41年法律第132号)で、1966年(昭和41)制定の雇用対策法を2017年(平成29)に抜本的に改正し、2018年に施行した。2019年6月(令和1)には、企業パワー・ハラスメントの防止義務を課した改正がなされ、パワハラ防止法ともよばれる。人口減や少子・高齢化を背景に、女性・高齢者・障害者らの労働参加を促し、多様な働き方と雇用の流動化を進め、働き方の異なる労働者間の均衡のとれた待遇の確保、育児・介護と仕事の両立、労働時間の短縮などの改革を進めることを明記した。同法に基づき、政府は労働施策基本方針を閣議決定し、労働基準法など関係法を改正して、労働者が能力を有効に発揮できる施策に取り組む。またパワハラを「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」(30条の2)と初めて定義。企業など雇用主に、就業規則への禁止規定の盛り込み、相談体制の整備プライバシー保護、処分方針の明確化、再発防止策などを義務づけた。大企業には2020年6月から、中小企業には2022年4月から適用。罰則規定はないが、行政指導しても改善しない場合、企業名を公表する。

[矢野 武 2021年7月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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