日本大百科全書(ニッポニカ) 「化物話」の意味・わかりやすい解説
化物話
ばけものばなし
昔話。化物の正体を見抜いて退治することを主題にした一群の昔話。人間が化物から逃れようとする逃走譚(たん)では、化物の正体は本格的な鬼や山姥(やまうば)などの怪物であるが、人間が化物を退治する話では、化物の正体は動物である。飼い猫が、主人の狩人(かりゅうど)の命をねらって、一つ目の化物に化ける「猫と釜蓋(かまぶた)」では、猫は茶釜の蓋で弾をよけながらその数を数えているが、最後、狩人が別に持っていた御守りの命弾(いのちだま)で撃たれる。化物の弱点を見透かす狩人の知力が、化物の魔力を超えているところに話の興味がある。山の中で、行灯(あんどん)をつけて糸を紡いでいる老婆に出会った狩人が、行灯を目がけて撃つと、化物が正体を現す「山姥の糸車」もその一例である。正体は、猿(さる)、狸(たぬき)、梟(ふくろう)などと伝える。数は多くないが、「化物問答」のように物が化ける話もある。「宝化物」は、化物屋敷に埋められている金(かね)が化物になって現れる話で、化物を恐れない旅人が、この金を得て金持ちになる。「化物寺」では、古くなった道具が化物になり、その始末を泊まった旅人に頼んでいる。これは、古い器物は放置しておくと化けるから、きちんと焼却するものであるという俗信を背景にした化物話である。小泉八雲が絵本にも書いた、楊枝(ようじ)の類が袴(はかま)を着けた小人に化けて踊るという「小(ち)い小(ち)い小袴(こばかま)」もこの類話である。
[小島瓔]