化物(読み)ばけもの

世界大百科事典 第2版の解説

ばけもの【化物】

妖怪変化(へんげ)などの怪異なものや,その出現によって引き起こされる怪異現象。江馬務は,〈妖怪は得体の知れないふしぎなもの,変化はあるものが外観的にその正体をかえたもの〉としているが,両者を明確に分けることはできない。化物は,本来の姿を変えて別の姿を現したものであり,その正体不明性が人々に恐怖を与えた。化物には,動植物や器物の化物のほか,怪音怪火などの自然現象も含まれ,人の姿で想像される場合はたいてい女子どもや爺婆などの周縁的な存在の姿をとった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

化物
ばけもの

化けて怪しい姿をするもの。妖怪(ようかい)とほぼ同意義で、本体のあるものが姿を変えて出現し、人に怪異の情をおこさせるもの。怪談などの主人公には狐(きつね)、狸(たぬき)、猫などが、女人や僧侶(そうりょ)の姿となって現れるのが多い。幽霊というのは人間の亡霊の化物であるが、化物には動物のほか樹木や怪火など自然現象も含まれる。たとえば、埼玉県川越(かわごえ)市の喜多院には、化物杉といわれる木があり、伐(き)ると血が出るという伝承をもつ。[大藤時彦]

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精選版 日本国語大辞典の解説

け‐もつ【化物】

〘名〙
① (「物」は衆生の意) 慈悲の心をもって衆生を教え導くこと。
※法華義疏(7C前)二「但化物之義、宜諸仏故」
② ばけもの。妖怪変化(ようかいへんげ)の類。
※太平記(14C後)二四「凡(およそ)心有る人は物を信じ化物(ケモツ)を見じと思ふ可(べ)し」

ばけ‐もの【化物】

〘名〙
① ばけて怪しい姿をするもの。自己の本来の姿を変え、人に怪異の情を起こさせるもの。怨念を持った人間は死んでからばけるといわれ、狐・狸・猫などもばけて人をたぶらかすとされる。おばけ。変化(へんげ)。妖怪。
※有明の別(12C後)二「母君もはけ物のあらはれいでたる心ちして」
② くわせ者。いんちきなやつ。
※談義本・根無草(1763‐69)前「いつとなく化物(バケモノ)仲間に入られ」
③ (医者の姿になって行ったところから) 遊郭遊女を買う僧侶のこと。
雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一六「やぼと化もの品川に入みだれ」
④ 人形浄瑠璃社会で、専門家としての階梯を通らず、素人として年季を入れた人が玄人に転じた者をいう。必ずしも軽蔑した称呼ではない。
本筋の修行もしてない芸人で、何かのはずみに一躍人気を得た者。

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世界大百科事典内の化物の言及

【妖怪】より

…こうした妖怪の両義的性格は,祭祀の有無による神と妖怪の相互変換性,人間の生活態度や信仰心のあり方,来訪してくる神や異人(遊行する宗教者や芸能者,その他の生業形態の違う人々)との交流のしかたなど,さまざまな事がらを反映して形成されている。化物幽霊【小松 和彦】
【中国】
 前5世紀の孔子が〈怪力乱神〉を語らなかったと《論語》が伝えていることは,中国人の妖怪や霊異などに対する合理的な思考をよく表している。しかし,現実には,近年出土の墓葬文物などからもわかるように,儒家思想が徹底していなかった時代には,死者の魂が昇仙しまた再生するのを守護する,聖なる怪獣がみちみちていた。…

※「化物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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