日本大百科全書(ニッポニカ) 「化粧だんす」の意味・わかりやすい解説
化粧だんす
けしょうだんす
鏡台と衣装用たんすとを組み合わせた形式の収納家具。椅子(いす)式生活をする西洋では、これは寝室に置く、もっとも重要な家具の一つであったため、種々の意匠のものがつくられたが、現在のような形が生まれたのは18世紀の初期イギリスにおいてであった。イギリスではドレッシングチェストdressing chest、アメリカではドレッサーdresserとよぶが、それぞれの国の住宅の様式にあうように発達してきたため、形はすこしずつ違っている。イギリスではたんすが、アメリカでは鏡が主体になっているのが特徴である。またフランスでは壁に鏡をかけ、その前にコモドcommodeとよぶ衣装だんすを置く形式が流行した。たんすの形は、正面が平面のもの、弓形のもの、波形のものなどがあり、引出しは4段が多く、鏡はたんすにあわせて設計されている。用材の化粧板にはウォールナット、マホガニー、ローズウッドなどが用いられた。日本で化粧だんすが普及したのは、住まい方が椅子式に変わった第二次世界大戦以降で、それ以前は和室に置かれた鏡台とたんすが化粧だんすにあたる役目をしていた。最近の化粧だんすは上段が小引出しで、大型の鏡がついたアメリカ風のドレッサー形式のものが多くなってきている。
[小原二郎]