匠戸(読み)しょうこ(その他表記)jiang-hu; chiang-hu

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「匠戸」の意味・わかりやすい解説

匠戸
しょうこ
jiang-hu; chiang-hu

中国,元・明代の手工業職人の戸。元代では手工業職人を特別の戸籍に編入し,工部で彼らを統轄し,所定の官営工場で働かせた。明も元の制度を踏襲し,戸籍を設けて彼らを工部に隷属させた。その身分地位世襲で,毎年一定期間働くことを強制した。服役方法には,地方に居住し交代で京師におもむく輪班匠と,京師に居住する住坐匠の2種があり,前者大半を占めた。のち役を希望しないものがふえたので,銀による代納 (班匠銀) 制が成立した。

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世界大百科事典(旧版)内の匠戸の言及

【元】より

… 蒙古,色目,漢人,南人の区分は特権に基づく身分規定であるが,これと平行して徭役義務のうえからも法制化された諸色戸計の身分規定は特権をもたない漢人・南人の一般庶民を対象とするものだけに内容も複雑である。諸色戸計とは一般民戸を狭義の民戸,站戸,軍戸,匠戸などに区分し,それぞれに特定の徭役を世襲せしめる(民戸には一般郷役,站戸には駅伝維持の諸負担,匠戸には各種の造作,軍戸には軍役を賦課する)ものであるから,まさしく身分規定とみなしてさしつかえがない。なかでも軍戸は元朝兵制を支える重要基盤であるにもかかわらず,江南には施行されないでひとり漢人戸のみをもって編成されたから,徭役の偏重による軍戸の疲弊をきたしてそれが各種の社会問題の原因となった。…

【賦役】より

…しかし元代においてとくに注目されるのは,特定の徭役を負担する戸を定めて,戸籍上他と区別したことである。匠戸,站戸(たんこ),鋪兵戸,弓手戸などがそれである。匠戸は技術者で官営工場などの労働に服し,站戸は駅伝の,鋪兵は早飛脚の労役を果たし,弓手は治安維持のために置かれた警官のようなものである。…

【明】より


[里甲制と税制]
 民政関係について述べるならば,まず人民は戸籍上,軍,民,匠,竈(そう)の4種に分けられているが,これは負担する徭役(ようえき)の違いによる分類である。すなわち,軍戸は兵役,民戸は一般行改の運営上必要な労働,匠戸は技術労働,竈戸は製塩労働を負担する者であった。数の上からいえば,民戸が圧倒的多数を占めていたので,以下は民戸を中心として解説する。…

※「匠戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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