神信心から千か所の神社に参詣(さんけい)することをいう。そのしるしとして千社札を奉納する風習が広く行われている。この信心は近世になって盛んになったが、神社ばかりでなく寺院に対しても行われた。とくに観音信仰が盛んになり千か寺観音に参詣するようになった。喜多村信節(きたむらのぶよ)の『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』によると、「千社参りは明和(めいわ)七年の『江戸名物鑑』にもみえず、安永(あんえい)この方のことなるべし、神社のみならず仏寺にも詣ずるのに千社参りといふはいかがなり」とある。千日祈願ということも行われ、数を重ねることで神仏の恩寵(おんちょう)を被ることができると考えたのである。しかしこれも信心だけでなく、千社詣でを果たしたことを誇りとする風習もあったのである。
[大藤時彦]
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