神や仏の力を信じ,これに帰依し,もろもろの願をかける心。したがって宗教に入る第一歩が信心である。仏教では発菩提心(ほつぼだいしん)とも信心ともいう。信仰というのもおなじであるが,信心はひろく通俗性をもっている。しかし仏教で〈信〉とか〈信楽(しんぎよう)〉といえば,絶対的帰依の哲学的意味をもたせる。したがって〈浄土を信楽する〉〈本願を信ずる〉とはいっても,浄土・本願を信心するといわない。よく〈鰯の頭も信心から〉などといわれ,庶民信仰としてあつかわれる。しかし庶民の信心にはかならず実践的表現がともなうもので,神仏への日参や千度詣,お百度踏みをしたり,塩断ち,火物断ちをしたりする。あるいは鳥居や狐の焼物や旗,散米,賽銭などの奉賽物をあげる。信心は実利的・合理主義的な人々からは笑いものにされることがあるが,一方〈あの人は信心深い〉といえば,頼もしがられる。慈悲や敬虔,勤勉などの美徳がともなうからである。
執筆者:五来 重
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…この場合,信仰は人格的対象をもち,かつ現実の生の困難にたえて神への要請にこたえる行為とされるのであるが,信仰があまりにも一点に集中しているため,〈信仰の自由〉や〈信仰と文化〉の問題が起こることはほとんどないのである。仏教では〈信心〉が出発点で,それが仏法の知恵と悟りにまで高められることを目的として進み,その過程で世界と人間の罪業の深きを知り,因縁の深さに打たれると説かれる。信心の究極は仏となることにあり,この本願に導かれることが信仰であるといえる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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