日本大百科全書(ニッポニカ) 「半衿」の意味・わかりやすい解説
半衿
はんえり
長襦袢(ながじゅばん)、半襦袢の衿に、汚れを防ぐことと装飾を兼ねてかける衿。半衿としてとくにつくられている。幅15センチメートル、丈90~100センチメートル。男物の色は黒、ねずみ、茶系統、藍(あい)で、布地は羽二重(はぶたえ)、黒八丈、琥珀(こはく)織、塩瀬(しおぜ)、絽(ろ)、麻などが用いられる。女物の色は白、ピンク、銀ねずみ色などがあるが、現在は白が一般的に用いられている。布地は塩瀬、羽二重、紋綸子(もんりんず)、縮緬(ちりめん)、夏用には平絽、絽縮緬、壁絽、紗(しゃ)、麻などが用いられる。
江戸初期においては、小袖(こそで)に掛け衿(共衿)をかけていなかったが、中期にかかるころから小袖に掛け衿をかけるようになり、江戸末期には、これが本衿に対して丈が短いということから半衿ともよばれた。襦袢が武家や町人などの民衆に用いられるようになってから、半衿を襦袢にかけるようになった。明治・大正は、半衿の装飾効果が存分に発揮された時代である。着物の色、柄がじみであったため、半衿に金糸、銀糸または色糸で刺しゅうを施し、ぜいたくなものがつくられた。そしてこの半衿を多く見えるように着装した。しかし第二次世界大戦中、奢侈(しゃし)禁令によって刺しゅうが用いられなくなり、淡色の無地となった。また戦後は、衿元を上方で重ね合わせて着装するようになり、半衿は細く少し見せるようになった。
[藤本やす]