単性説(読み)たんせいせつ(その他表記)Monophysitism

日本大百科全書(ニッポニカ) 「単性説」の意味・わかりやすい解説

単性説
たんせいせつ
Monophysitism

イエス・キリスト人性神性の関係をめぐるキリスト論の一つで、キリストの神性をとくに強調する説。5世紀なかばコンスタンティノープルのエウテケスEutychēs(378ころ―454)は、キリストの人性を強調したネストリウスの説に強く反対したアレクサンドリアのキリロスCyrillosの説をさらに発展させ、受肉(インカーネーション)以前のキリストにおける神性と人性の両性は、受肉後神性が人性を吸収して単一の性になるとする単性説を主張した。この説は、451年のカルケドン公会議で異端とされたが、エジプトシリアパレスチナなどの東方諸教会は単性説を支持し、東ローマ皇帝によるたび重なる弾圧や懐柔策にもかかわらず、かえって東方諸教会の分離傾向は強まった。一方、単性説内部にも、受肉後のキリストの肉体の非腐敗性を主張するハリカルナッソスのユリアヌスJulianusの説や、これに反対するより穏健なアンティオキアのセウェルスSeverusの説など、さまざまな説が現れた。今日、単性説はエジプトのコプト教会エチオピア教会アルメニア教会、シリアのヤコブ派教会などにみられる。

[島 創平]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

旺文社世界史事典 三訂版 「単性説」の解説

単性説(論)
たんせいせつ
Monophysitism

キリストの人性は,受肉後は神性に吸収されるとして,その神性を強調する,5世紀に現れたキリスト論
エジプトで広まったが,451年のカルケドン公会議で異端とされた。単性説をめぐる論争は政治的に利用され,ビザンツ帝国でのエジプト・シリアの離反を促した。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

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