改訂新版 世界大百科事典 「即伝」の意味・わかりやすい解説
即伝 (そくでん)
室町時代後期の下野国日光山の修験者。生没年不詳。阿吸房と称す。豊前国彦山(英彦山)に赴き客僧として華蔵院承運に師事,1509年(永正6)彦山累代正大先達金剛位を受け,権少僧都に任ぜられる。修験道彦山派の峰中修行に関する儀礼教義を集大成した《三峰(さんぶ)相承法則密記》をはじめ,《彦山峰中灌頂密蔵》《修験頓覚速証集》等の著があり,《修験修要秘決集》も即伝の撰といわれている。その伝はつまびらかでないが,広く諸国の霊山を巡って練行を重ね,彦山派の峰中儀礼を伝えたもようで,各地にその授与を示す切紙を残している。その著書は修験道の基本文献として,流派を問わず各地の修験者の間で広く用いられ,修験道教学のうえに果たした功績は大きい。
執筆者:佐々木 哲哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報