年代に疑問がもたれるが、建保元年(一二一三)に撰述されたという縁起書「彦山流記」(以下、流記と略称)によれば、当山は継体天皇二五年に藤原恒雄が開いたという。ところが元亀三年(一五七二)の「鎮西彦山縁起」(以下、元亀縁起と略称)によれば、開山は魏国の僧善正で、豊後国日田郡の狩人藤原恒雄が善正に帰依、出家して忍辱と号し、霊仙寺を開き、上宮三社を建立したという。ところで両縁起がともに当山開創に深くかかわった人物とする藤原恒雄については、朝鮮神話で始祖神とされる檀君の父桓雄(帝釈桓因の子)が投影されているとの見方もある。現在英彦山神宮は添田町にあるが、同地は古代には豊前田河郡に属した。郡内の
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
福岡県の南東部田川郡から大分県の北西部中津市にかけて位置する英彦山地の主峰で,標高1200m。主として新第三紀後期~第四紀の火山岩からなり,標高約800mまでは筑紫溶岩で,その上に輝石安山岩をのせている。輝石安山岩が浸食に対する抵抗が強いため,山頂部はビュート地形で3峰に分かれ,中岳には英彦山神宮が鎮座する。古くから山伏の修験道場として栄えたが,明治維新後の神仏分離により衰微し,現在では英彦山神宮の門前町的な小集落がみられるだけである。しかし,樹齢1200年,高さ60mの鬼杉の巨木(天)や伝雪舟作の旧亀石坊庭園,奉幣殿,銅(かね)の鳥居などの文化財に富み,耶馬日田英彦山国定公園に指定され,またスキー場のある鷹ノ巣原に国民宿舎,キャンプ場,青年の家などがあって,春や秋の観光シーズンを中心に九州北部からの観光客が多い。JR日田彦山線彦山駅から豊前坊までバスの便がある。
執筆者:赤木 祥彦
古くは日子山と書き,嵯峨天皇のときに彦山と変わり,1729年(享保14)霊元上皇の院宣によって英彦山と書くようになった。英彦山は奈良時代の医僧法蓮の入峰以来,山伏の修験道場として栄え,最盛期には僧坊3800を数え,その信仰は九州一円に及び,大峰山,羽黒山と並んで日本の三大修験道場とされた。天狗や鬼がすむと伝えられるほど奇岩怪石に富み,中世末から近世期にかけて,本山派,当山派が全国的規模で修験道の組織化を推し進めていくなかでも,英彦山は東北の出羽三山とともにその独自性を保ってきた。
英彦山信仰は山岳信仰史・修験道史においても注目する点が少なくない。それは,修験道の教義的側面を発展させ指導的役割を担ってきたことと,古代から中世にかけての信仰を伝えていることであろう。たとえば弥勒兜卒(みろくとそつ)内院四十九院に擬した49窟の存在は,山中を駆けめぐる抖擻(とそう)修行が導入される以前の洞窟籠り修行を伝えている。また,ほぼ九州全域に分布する檀那に経済的基盤を置く以前は,〈四境七里〉と称された神領が基盤となっていたこともその一例である。さらに大陸との関係,三組一山という近世期支配体制,行事の変化と芸能など特筆すべき点が少なくない。しかし,明治の廃仏棄釈で修験的堂宇や仏像は奉幣殿を除いて大部分失われてしまった。なお,英彦山みやげとして彦山土鈴が古くから有名で,今でも農家の豊作祈願の呪具となっている。
→英彦山神宮 →彦山派
執筆者:宮本 袈裟雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
福岡県田川郡添田(そえだ)町と大分県中津(なかつ)市との境にある火山で、標高1199メートル。おもに安山岩からなる耶馬(やば)渓溶岩台地の一部が開析されてできた英彦山火山群の主峰で、山頂部は北岳、中岳、南岳の三峰からなり、中岳に英彦山神宮上宮がある。古くから大和(やまと)の大峰(おおみね)山、出羽(でわ)の羽黒(はぐろ)山と並ぶ山岳信仰の霊山として知られ、山伏の修験(しゅげん)場として盛時には山麓(さんろく)に3800余の坊舎が建ち並んでいたが、明治以降は神仏分離で衰退し、坊舎跡の多くは水田にかわった。国指定重要文化財の奉幣殿(ほうへいでん)、銅(かね)の鳥居、雪舟の作といわれ国の名勝に指定されている旧亀石坊(かめいしぼう)庭園などの文化財に富む一方、動植物の宝庫で、樹齢1000年を超える国指定天然記念物の鬼スギをはじめ、ブナの原生林やスギの美林に覆われて、耶馬日田(ひた)英彦山国定公園の指定を受けており、山頂からの眺望は雄大である。北東部にある鷹(たか)ノ巣山はビュート火山の奇峰で国指定天然記念物となっている。国民宿舎、青年の家、キャンプ場などの設備があり、一年を通じて北九州の手軽なレクリエーション地として行楽、参拝客が多い。国道500号が北麓を通り、九州旅客鉄道日田彦山(ひたひこさん)線彦山駅より神社下までバスで20分、山頂まで徒歩で2時間半ほどかかる。
[石黒正紀]
『田川郷土研究会編『英彦山』増補版(1978・葦書房)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新