参加民主主義(読み)さんかみんしゅしゅぎ(英語表記)participatory democracy

知恵蔵 「参加民主主義」の解説

参加民主主義

従来の民主主義は代表(間接)民主主義であり、市民は選挙で代表者を選んだ後は、政治に直接関わることはできなかった。日本では地方自治体レベルで、首長解任議会解散条例の制定改廃について、直接請求が例外的に認められているに過ぎない。選挙の際の政党や候補者の公約が曖昧で、選ばれた後に公約を無視することが当たり前になると、市民の側は無力感に陥る。行政運営や政策の中身をチェックするというよりも、政治は代表者に任せ、住民は行政サービスを受け取りさえすればよいというお任せ民主主義の風潮も広がった。近年、行政の無駄を省き、社会の需要を的確に政策形成に反映させるには、市民の直接的な参加による参加民主主義を進める必要があるという認識が行政、市民の双方に高まっている。具体的には、政策形成過程において市民の発言の機会を確保するためのワークショップ、自由参加の審議会などが工夫されている。情報公開が定着し、政策の問題点が見えやすくなったことも、参加を促す要因となっている。

(山口二郎 北海道大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「参加民主主義」の意味・わかりやすい解説

参加民主主義
さんかみんしゅしゅぎ
participatory democracy

1960年代後半から噴出した市民運動住民運動,学生運動などの直接行動に代表される運動をいう。高度に発達した産業社会においては,多数派によって左右される議会制民主主義では集約できない国民的意思が存在する。利害の多元化した産業社会では,民衆による直接参加は混乱を招くとして,選挙によって選ばれたエリート間の競争に決定をゆだねるべきであるとするシュンぺーターらの均衡的民主主義に対抗して生れた民主主義のモデルである。これは政治参加を自己利益の達成としてではなく,市民的な徳性の陶冶として理解することで,利益政治の限界をこえる視点を提示している。

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