改訂新版 世界大百科事典 「反古座」の意味・わかりやすい解説
反古座 (ほうぐざ)
すきかえし用の反古紙を商った中世商人の座。すきかえし紙である宿紙(しゆくし)は,綸旨・補任状などの用紙として朝廷で用いられ,律令制以来図書寮(ずしよりよう)の管掌するところであった。この宿紙を扱う座を宿紙上下座といい,上座は図書寮に所属する紙工が座をなしたもので,栂井氏の支配下にあった。下座は紙の需要が増大したことにより,室町期に商品生産に応じて生まれた新しい座である。上座・下座では宿紙のほかに続紙,御幣紙,緑紙,黄紙などをつくり,公事として貢納している。宿紙上下座は京の綾小路通西洞院西辺にあった。この両座のほか,京都には製紙原料である楮(こうぞ)を商う楮商人や,すきかえし用の反古商人が出ている。奈良にも古紙座があった。このような商人によって原料の供給を受け,宿紙上下座が生産にあたったのである。
地方では応永ごろまでに讃岐が製紙の中心となり,以後備中の小高壇紙や播磨の杉原,越前の鳥の子,美濃紙,土佐厚紙,但馬紙,伊豆修善寺紙などが,荘園からの貢納品などとしてあいついで京都にもたらされ,また地方の需要を満たしていた。京都にも紙すきの座はいくつかあったが,反古紙を再生産するという行為が成り立つのは,反古紙が多く出て宿紙の需要の多い京都・奈良に限られた。
執筆者:田端 泰子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報