取掛・取懸(読み)とりかける

精選版 日本国語大辞典 「取掛・取懸」の意味・読み・例文・類語

とり‐か・ける【取掛・取懸】

[1] 〘他カ下一〙 とりか・く 〘他カ下二〙
① 取ってからだに掛ける。取ってつける。着用する。
古事記(712)下・歌謡「鶉とり ひれ登理加気(トリカケ)て」
② 取って物にぶらさげる。
平家(13C前)三「葦をゆひ、けたはりにわたし、上にもしたにも松の葉をひしと取かけたり」
[2] 〘自カ下一〙 とりか・く 〘自カ下二〙
① 攻めよせる。攻めかける。
※玉塵抄(1563)二「魯から斉ををかいてとりかけて斉の門きわえ陣をすえたぞ」
② 取りはじめて途中の状態にある。その事に手をつけはじめる。
醍醐寺文書‐(年月日未詳)(室町)僧堯済カ書状「申入候絵いまた御取かけられ候はぬや」

とり‐かか・る【取掛・取懸】

〘自ラ五(四)〙 (「とり」は接頭語)
① 取り組みはじめる。手をつけはじめる。着手する。
※能因本枕(10C終)一〇四「その御返事奉らんとてとりかかるほどに」
② あるものに心がかかる。そのことが気にかかる。
源氏(1001‐14頃)蜻蛉「又みやのうへにとりかかりて、こひしうもつらくもわりなき事ぞ」
③ 物に取りすがる。すがりつく。よりかかる。すがる。
※古事記(712)上「手足に取懸(とりかかり)て哭き悲しみき」
④ 立ち向かってゆく。うってかかる。つかみかかる。
※宇津保(970‐999頃)国譲中「ものどもにとりかかりて、つかみこぼしたまふへば」

とり‐かかり【取掛・取懸】

〘名〙
① とりかかること。手をつけること。着手。
随筆耳嚢(1784‐1814)四「具足一領が拵度、注文は如斯也と書付を見せ〈略〉右廿両を渡しける故請取帰り、取掛り之儀申付」
物事をしはじめる手がかり。とっかかり。
微温(1909)〈水野葉舟〉一「彼は極めて、取りかかりの無い、茫漠とした不安な感じが起るのであった」
③ 並んでいるものの一番手前。とっかかり。

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