注文(読み)チュウモン

デジタル大辞泉 「注文」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐もん【注文/×註文】

[名](スル)
種類・寸法・数量・価格などを示して、その物品の製造や配達・購入などを依頼すること。また、その依頼。「酒の―をとる」「新刊書を―する」
人に依頼したり、自分が希望したりするときにつける条件。「原作者の―にこたえた演出」
注進状」に同じ。
文書。かきつけ。
「各々聞き書きの―に子細しさいを載せられたり」〈盛衰記・二七〉
[類語](1発注用命予約申し込みオーダー特注別誂え外注受注頼む/(2希望要求要望要請請求迫る求める頼む請う仰ぐ懇請懇望こんもうする所望ちょうする催告せがむせびるねだる強要強請請託依頼懇願ゆすり請い求め願うリクエストアンコール

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精選版 日本国語大辞典 「注文」の意味・読み・例文・類語

ちゅう‐もん【注文・註文】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 注進の文書。注進状。
    1. [初出の実例]「国司解状作田陸町玖段参佰歩不注子細、本寺注文云、件処神境東四至内也」(出典:石清水田中家文書‐延久四年(1072)九月五日・太政官牒)
  3. ある事柄についての要件を列記した文書。書き付け。記録。
    1. [初出の実例]「副進所課注文一通。右、住僧寺謹言上、倩案」(出典吾妻鏡‐寿永元年(1182)五月二五日)
  4. ( ━する ) あつらえること。品種・数量・形式などを指定して、製作・送付・購入などを依頼すること。また、その依頼。
    1. [初出の実例]「燈台・火鉢・蝋燭台、雖註文進也」(出典:庭訓往来(1394‐1428頃))
    2. 「ふる着やへちうもんして小うめとうざんの二タ子をり」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
  5. あつらえるものの条件。製作や送付を依頼する場合、あらかじめ申し送る希望。また、その文書。
    1. [初出の実例]「そのときつかい候べきもののちうもんあるべく候」(出典:朝鮮板伊路波(1492))
  6. ( ━する ) こうしたい、ああしたいと望むこと。願望。期待。
    1. [初出の実例]「今日は昼から、新たしろが所で、伊勢喜の伴頭が壱ッ斤はり出したから、おごりといふ注文(チウモン)よ」(出典:洒落本・卯地臭意(1783))
  7. 特に注意すべき事柄。特徴
    1. [初出の実例]「『そんならこなさんの落した煙管であらうぞえ。マア、註文(チウモン)を云って見ねえ』『〈略〉わし煙管は吸ひ口が噛みひしゃいであります』」(出典:歌舞伎・杜若艷色紫(1815)大切)

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改訂新版 世界大百科事典 「注文」の意味・わかりやすい解説

注文 (ちゅうもん)

日本の古文書の一様式。〈しるしぶみ〉ともいう。ある事柄を調査し,その要件を明細書きにしたメモ。〈一,○○○,一,△△△〉と連記する〈一つ書き〉の形式をとることが多い。主として財物のリストとして作成された目録と相違して,書きあげの対象は人名,人数や物品の数量・種類など,まったく任意であった。また1通で独立した報告書として機能した注進状と異なり,注文は,文書として提出することを予定しない手控えか,明細報告書として上申文書などに添えられた副進文書をも含む。注文が文書様式として発展した時代は中世で,〈交名(きようみよう)注文(人名リスト)〉〈合戦手負注文(負傷者リスト)〉〈支度注文(あつらえものの注文書)〉などの個別的名称も生まれた。ちなみに〈注文(依頼)する〉という動詞形の用法は,この文書様式から生じたものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「注文」の意味・わかりやすい解説

注文(流通)
ちゅうもん

一定の財の生産や輸送、サービスの提供を買い手が売り手に対して申し込む行為。口頭、電話、郵便電報、インターネット、ファクシミリなどで行われるが、目的物の品質や価格が確定している簡易かつ日常的なものを除けば、文書を用いるのが一般的であり、しかも安全、確実である。注文に際しては、品質、数量、価格、受け渡しの時期と場所、代金決済の期日と方法、荷造り、輸送方法などを明確にしなければならない。これらを明記した注文用の文書を注文書という。重要な注文については、注文先の信用等について調査をすることが望ましい。一般に注文は買い手から売り手に申し込む売買取引であるが、売り手から買い手に申し出ることもある。注文がそのまま売買契約になる例が多いが、消費者保護のため、一定の場合に、所定冷却期間内であれば違約金なしで無条件に解約できる制度がある。これをクーリング・オフという。特定商取引法(昭和51年法律第57号)、割賦販売法(昭和36年法律第159号)にこの規定がある。

[森本三男]


注文(古文書)
ちゅうもん

古文書の一様式。ある事柄を調査し、その要件を明細書きとしたメモ。類似の用語として注進状があるが、注文は「一つ書き」の形式をとることが多い。また独立した文書としての意味合いを有する注進状に対して、注文は副進文書や単なる手控えをいう場合が多い。なお、調査・書き上げの対象は、人名、人数や物品の数量、種類などまったく任意であり、この点で財物のリストとして作成された目録と異なる。注文が文書様式として発展した時代は中世であって、「交名(きょうみょう)注文」(人名リスト)、「合戦手負(かっせんておい)注文」(戦闘負傷リスト)、「支度(したく)注文」(必要物品リスト)などの個別的名称も生まれた。

[保立道久]

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普及版 字通 「注文」の読み・字形・画数・意味

【注文】ちゆうぶん

注釈の文。

字通「注」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「注文」の意味・わかりやすい解説

注文
ちゅうもん

相撲用語で作戦のこと。特に立ち合いの奇襲作戦の場合によく用いられる。「注文をつける」は「勘定をつける」と同じ。

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世界大百科事典(旧版)内の注文の言及

【注文】より

…主として財物のリストとして作成された目録と相違して,書きあげの対象は人名,人数や物品の数量・種類など,まったく任意であった。また1通で独立した報告書として機能した注進状と異なり,注文は,文書として提出することを予定しない手控えか,明細報告書として上申文書などに添えられた副進文書をも含む。注文が文書様式として発展した時代は中世で,〈交名(きようみよう)注文(人名リスト)〉〈合戦手負注文(負傷者リスト)〉〈支度注文(あつらえものの注文書)〉などの個別的名称も生まれた。…

※「注文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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