日本大百科全書(ニッポニカ) 「口腔外科学」の意味・わかりやすい解説
口腔外科学
こうくうげかがく
口腔およびその周辺の硬組織(歯を除く)、軟組織の病変あるいは外傷の原因、病理、症状、診断、治療法等を考究する歯学の一分野をいう。対象とする部位によって、歯科外科学、顎(がく)顔面外科学に大別されるが、通常は両者を含めて使われる。また口腔外科学を臨床に応用する外科の一分野は口腔外科とよばれ、(1)高度なう蝕(しょく)、歯周疾患等により、口腔内に保存することが不可能な歯の抜歯、(2)口唇裂、口蓋(こうがい)裂などの形態異常に対する形成外科的処置、(3)顎骨骨折、顎関節脱臼(だっきゅう)、あるいは顎関節損傷などの外傷に対する整形外科的処置、(4)顎骨骨髄炎、口腔カンジダ症などの口腔内感染症に対する処置、(5)歯原性および非歯原性嚢胞(のうほう)の外科的処置、(6)口腔内に原発した良性、悪性の腫瘍(しゅよう)に対する外科的療法、(7)三叉(さんさ)神経痛や顔面神経麻痺(まひ)などの神経性疾患の治療、(8)その他、口腔およびその周辺にみられる種々の疾患の治療などを行う。口腔内には、全身疾患の初発症状がみられることも多々あり、耳鼻咽喉(いんこう)科、眼科、皮膚科、脳外科など他の隣接領域との関連性も大きい。
[土谷尚之]