顎関節脱臼(読み)がくかんせつだっきゅう(英語表記)luxation of the temporomandibular joint

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

顎関節脱臼
がくかんせつだっきゅう
luxation of the temporomandibular joint

俗に顎がはずれるという状態。顎関節を包む関節嚢は伸展性があるので,外傷や,あくび大笑い,あるいは歯科治療などで口を大きく開けたときなどに脱臼することがある。脱臼すると,口がしまらなくなり,よだれが出たり,飲込む動作や話すことができなくなる。関節部の形が異常な人では習慣性になりやすい。

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家庭医学館の解説

がくかんせつだっきゅう【顎関節脱臼 Dislocation of the Temporomandibular Joint】

[どんな病気か]
 片側あるいは両側のあごの関節がはずれる病気で、口を大きく開けすぎることが原因となります。
 口を閉じられなくなって、会話もできなくなります。耳の前がくぼんで、頬骨(ほおぼね)の下に脱臼(だっきゅう)した下顎頭(かがくとう)がふくらんで突出した状態になります。
 治療は、下あごの奥の部分を押し下げるようにして整復します。
 口腔外科(こうくうげか)、耳鼻咽喉科(じびいんこうか)、整形外科で治療が受けられます。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

顎関節脱臼
がくかんせつだっきゅう

俗に「あごが外れた」という語で表現されるが、下顎頭が顎関節から外れて、正常位置に戻らなくなった状態をいう。あくび、嘔吐(おうと)、歯の治療などの際の無理な開口、全身麻酔時の気管内挿管、あるいは開口時のおとがい(頤)部に対する打撲などによって生ずる。脱臼方向によって前方、後方、側方に分けられるが、前方脱臼が大部分を占め、下顎頭が関節円板とともに関節結節を越えて前方に脱出した状態を示す。両側性に前方脱臼がおこると、下顎骨は前下方に移動し、口を閉じることができなくなり、顔貌(がんぼう)は面長になる。そしゃく、発音および嚥下(えんげ)に障害がおき、よだれが流れ、関節部に疼痛(とうつう)あるいは不快感が生ずる。片側性脱臼の場合は、下顎正中部が脱臼していない側(健康側)にずれるが、障害の程度は軽い。脱臼直後の場合は、ただちに徒手整復を行い、数週間顎運動を制限する。脱臼後時間が経過すればするほど整復はむずかしくなる。[土谷尚之]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

顎関節脱臼
がくかんせつだっきゅう
Dislocation of the temporomandibular joint
(口・あごの病気)

どんな病気か

 一般に「あごが外れた」といわれる病態です。が、実は、外れたのではなく、自力で「もどせなくなった」というほうが正しいのです。

 口をあける際に、顎関節を構成する下顎骨(かがくこつ)下顎頭(かがくとう)は回転しながら前下方に滑走(かっそう)運動し、大あくびをした時は、関節隆起(かんせつりゅうき)と呼ばれる峠を乗り越えてしまいます。その後、口を閉じようとしても下顎頭が元にもどれない(関節隆起を後方に乗り越えられない)状況を顎関節脱臼と呼び、結果的に口を閉じることができません。

原因は何か

 ほとんどの患者さんに咀嚼筋(そしゃくきん)(あごを動かす筋肉)の疲労がみられ、口をあけて前下方に移動した下顎(下あご)を後方に引きもどす筋力が不足した結果と考えられます。

症状の現れ方

 大きく口をあけた後、自力で口を閉じることができなくなった状態で、脱臼した顎関節の痛み、流涎(りゅうぜん)(よだれ)が認められます。また、脱臼したほうの顎関節部(耳の前方部)が陥没します。片側性あるいは両側性に発生することがあります。

 すぐに整復せずに慢性化してしまうと陳旧性(ちんきゅうせい)顎関節脱臼となり、元の位置に整復することは極めて困難となります。また、短期間に整復と再脱臼を繰り返すような病態を習慣性顎関節脱臼と呼びます。

検査と診断

 前述の臨床症状と単純X線検査によって診断します。手術を前提とした陳旧性あるいは習慣性顎関節脱臼に対しては、術前検査の一環としてCT検査などが追加されます。

治療の方法

 発生後の時間経過が短ければ容易に徒手(としゅ)整復が可能です。整復は患者さんの頭位を安定させ、術者の拇指を患者さんの下顎臼歯部上に置き、押し下げつつ、患者さんの下顎を後方へ誘導します。整復完了後は再脱臼防止のために弾性包帯で固定などを行い、患者さんに顎運動の制限を指示し、数日間経過観察します。

 しかし慢性化した例では、関節構造の器質的変化により徒手整復は困難となり、手術を要することもあります。また、習慣性顎関節脱臼の場合にも最終的に手術が必要となることがあります。

症状に気づいたらどうする

 早急に口腔外科専門医の診察を受けることをおすすめします。

濱田 良樹

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世界大百科事典内の顎関節脱臼の言及

【あご(顎)】より

…したがって関節面の形もそれぞれ特有の形を示す。
[顎関節脱臼]
 下顎頭が側頭骨の下顎窩から脱出して関節結節を越える前方脱臼と,下顎頭が外耳道前壁の骨折を伴って後退する後方脱臼とがある。一般に前方脱臼が多く,これが俗にいう〈あごが外れる〉状態である。…

※「顎関節脱臼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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