呼吸樹(読み)コキュウジュ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「呼吸樹」の意味・わかりやすい解説

呼吸樹
こきゅうじゅ

棘皮(きょくひ)動物のナマコ類に特有の呼吸器官。別名、水肺(すいはい)ともいう。樹木状の構造で、肛門(こうもん)につながる総排出腔(こう)(直腸)より発して、消化管両側に左右1対存在する。発生的には腸から分化した器官と考えられる。肛門括約筋と総排出腔の筋肉の収縮弛緩(しかん)によって、海水が呼吸樹を往復して、ガス交換を行う。ナマコの種類によっては呼吸樹をもたないものもあり、それらの種類では体壁で呼吸が行われる。また、呼吸樹をもつ種類でも、同時に、体壁を通しての呼吸も行われている。

[雨宮昭南]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の呼吸樹の言及

【カクレウオ(隠魚)】より

…ナマコの体内に入るときには,細い尾部から後ずさりするようにし,ナマコの肛門から侵入する。ナマコには肛門内の総排出腔に開く呼吸樹と呼ばれるものがあり,総排出腔の筋肉の運動により水を呼吸樹に出し入れして呼吸している。そのため,カクレウオはナマコの体内にいても呼吸などが容易にできると考えられている。…

【呼吸】より

…外套腔は呼吸孔をのこして薄い隔壁で閉じられて呼吸気室となり,水分の蒸発を防ぐとともにその下面の筋肉を上下させて換気する。ナマコ類には,直腸から体腔内に膨出した樹状の薄膜管で作られた呼吸樹(水肺)と呼ばれる器官があり,呼吸に用いられる。肛門と直腸の運動によってその管内を換水する。…

【ナマコ(海鼠)】より

…消化管は非常に長く,体内をS字状に曲がって末端部近くが膨らんで総排出腔になり,肛門に続く。総排出腔の壁の一部が体腔中へのびて木の枝のように複雑に分岐し,呼吸樹(水肺)という特有の呼吸器になっている。この呼吸樹の表面には毛細血管がはりめぐらされていて,筋肉の収縮によって肛門から海水を流入させ,呼吸樹の壁を通して酸素をとり入れている。…

※「呼吸樹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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