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和歌十体 わかじってい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

和歌十体
わかじってい

歌論用語。和歌の 10の風体 (ふうてい。歌風に基づく一首としての姿) の総称。また,10の風体を例歌によって示した歌学書をもさす。歌を 10体に分けることは早く奈良時代の『歌経標式』にみられるが,これは歌体,発想,表現技巧などさまざまな観点から分けたもので,分類の基準は一貫していない。風体のうえから分けたものとしては平安時代中期に壬生忠岑 (みぶのただみね) の『忠岑十体』 (『和歌体十種』) があり,これには中国詩学の影響が認められる。平安後期の『奥義抄』には『道済十体』 (佚書) がみえる。鎌倉時代の藤原定家の『定家十体』は最も知られ,これは「幽玄様」「長高様」「有心 (うしん) 様」「事可然 (ことしかるべき) 様」「麗様」「見様」「面白様」「濃様」「有一節 (ひとふしある) 様」「拉鬼様」の 10を設け,それぞれ例歌を掲げている。定家は『毎月抄』でも十体に言及し,「幽玄様」「事可然様」「麗様」「有心体」の4体が基本であり,なかでも「有心体」が最も中心であることを説いている。しかし『定家十体』は偽書とする説もある。『良経詩十体』というものもあったらしく,のちには連歌論,能楽論でも唱えられた。

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世界大百科事典 第2版の解説

わかじってい【和歌十体】

中国詩学の詩体分類法にならって,和歌の表現様式を10種の範疇に区分した歌学書の汎称。最初に10世紀末から11世紀ころの壬生忠岑作とされる《忠岑十体(ただみねじつてい)》(偽書説もあり)があって,主として審美論的基準で古歌体,神妙体,直体,余情体,写思体,高情体,器量体,比興体,華艶体,両方致思体を立てたのに始まる。後の書では藤原定家(仮託書とも)《定家十体》が,より内在的に表現論的立場で鎌倉期和歌批評の基本概念を盛りこみ,その立場は定家に仮託された歌学偽書群に継承され,尊重された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

和歌十体
わかじってい

和歌の様式分類。現存の歌論書では『和歌体十種』(『忠岑(ただみね)十体』ともいう。『道済十体』はその抄出)と藤原定家『毎月抄(まいげつしょう)』とに十体論があり、後者の例歌を示すものとして『定家十体』(偽作説がある)がある。『和歌体十種』(壬生忠岑撰(みぶのただみねせん)を疑う説が有力)は、「古歌体、神妙体、直体、余情体、写思体、高情体、器量体、比興体、華艶体、両方体」を「高情体」を中心としてあげ、各五首の例歌を示す。『毎月抄』は、「幽玄様、事可然様、麗様、有心(うしん)体、長高様、見様、面白様、有一節様、濃様、鬼拉体」を「有心体」を中心としてあげる。定家作と偽る『愚見抄』は八体、『愚秘抄』は十八体、『三五記』は二十体を『毎月抄』の十体以外に示している。[藤平春男]
『佐佐木信綱編『日本歌学大系1・3・4』(1956~57・風間書房)』

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