哀れなリーザ(読み)あわれなりーざ(英語表記)Бедная Лиза/Bednaya Liza

日本大百科全書(ニッポニカ) 「哀れなリーザ」の意味・わかりやすい解説

哀れなリーザ
あわれなりーざ
Бедная Лиза/Bednaya Liza

ロシア作家カラムジンの初期の短編。1792年、作者自身の編集する『モスクワ雑誌』に発表された。モスクワ郊外に住む村娘リーザ貴族の若者エラストとの間に牧歌的な恋が展開するが、カルタ遊びで莫大(ばくだい)な借金をつくったエラストは金持ちの未亡人と婚約してしまう。リーザはこれを知って、かつてエラストとのあいびきの場所であったシーモノフ修道院の池に身を投げて死ぬ。平易な文体と恋愛心理のみずみずしい描写によって広く世に迎えられ、リーザのようにシーモノフ修道院の池に投身する子女が跡を絶たなかったという。荘重な古典主義文学にかわるロシア主情主義文学の代表作。

中村喜和

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「哀れなリーザ」の意味・わかりやすい解説

哀れなリーザ
あわれなリーザ
Bednaya Liza

ロシアの作家 N.カラムジン小説。 1792年作。ロシア感情主義文学の代表的短編小説農家の娘リーザが貴族の青年エラストと愛し合い,やがて捨てられ自殺するという,きわめて単純なストーリーである。しかし,この作品は 18世紀末ロシアの読者層の間に一大センセーションを巻起した。それは当時さげすまれていた農家の女性でさえ人間的な感情をもちうるというテーマの斬新さと,古典主義的な叙述形式を廃した表現の清新さが,感情主義的な風潮にマッチしていたためである。

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